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宇都宮けんじブログ
今都政に求められる課題16項目(2020年5月)
今都政に求められる課題16項目を多摩住民自治研究所 機関紙 月刊『緑の風』に寄稿しました。
今、都政に求められるもの
宇都宮健児
一.わが国で貧困と格差が拡大している
厚生労働省が発表した2015年のわが国の相対的貧困率によると、国民の6人に1人が、こどもの7人に1人が、1人親世帯の2世帯に1世帯が貧困状態に陥っていわが国は世界第3位の経済大国にもかかわらず、多くの先進国が加盟するOECD(経済協力開発機構)の中でも貧困率が大変高い国となっているのです。
わが国で貧困と格差が拡大している背景には、「社会保障の貧困」と「労働政策の貧困」があります。
生活保護制度は、生存権を保障した憲法25条を具体化した制度ですが、生活保護を利用する資格のある人のうち現に生活保護を利用している人の割合(捕捉率)は2~3割にとどまっています。昨年の12月24日クリスマスイブの日、都内江東区北砂の集合住宅で男性2人の遺体が発見されました。亡くなったのは、この部屋に住む72歳と66歳の兄弟で、体重は兄が30キロ台、弟は20キロ台しかなかったということです。料金の滞納で電気やガスが止められていて、水道も止められる直前でした。兄弟とも当時は無職で年金はなく無収入の状態でしたが、江東区によると二人の兄弟から生活保護の申請や相談はなかったということです。
非正規労働者は年々増加し、現在では2100万人を超えて全労働者の約4割となっています。また、年収200万円以下の低賃金労働者は12年連続で1000万人を超えています。
このような「社会保障の貧困」や「労働政策の貧困」を解決できないのは、わが国の「政治の貧困」の結果です。
二.都政の役割とは
地方自治法では、地方自治体の役割を「住民の福祉の増進」と定めています(地方自治法第1条の2第1項)東京都も1つの地方自治体ですので、都政の役割は、外国人を含む都民1人ひとりの命と暮らしを守ることにあります。
2020年度の東京都の予算は、一般会計の総額が7兆3450億円、特別会計・公営企業会計と合わせると15兆4522億円となり、スウェーデンの国家予算を超えています。この潤沢な予算を都民生活のために重点的に使っていけば、貧困と格差の拡大を解消し、都民一人ひとりの生活を豊かにしていくことが可能になります。
三.今、都政に求められるもの
今都政に求められている課題は、次に述べるような課題です。
01. 学校給食の完全無償化~子どもの貧困をなくす。
韓国では70%以上の小中学校で給食の完全無償化が実施されており、ソウル市では2021年までにすべての小・中・高等学校で給食の完全無償化が実施される予定となっています。日本では、給食の完全無償化を実施している自治体は、全自治体の4.4%にとどまっています。
02. 義務教育の完全無償化(修学旅行や教材なども無償にする)、すべての高校の所得制限のない授業料の無償化、夜間中学・夜間定時制高校の拡充、都立大学・専門学校などの授業料の半額化または無償化~誰もが学べる都政を実現する。
03. 都営住宅の新規建設と家賃補助制度・公的保証人制度の導入、原発事故避難者に対する住宅支援~住まいの貧困をなくす。
04. 公契約条例の制定、非正規労働者を減らし正規労働者を増やす~働く者の貧困をなくす。
05. 都立病院(8病院)、公社病院(6病院)の独立行政法人化(実質的な民営化)に反対する~都民の命と健康を守る。
06. カジノ誘致に反対する~人の不幸を踏み台にする経済政策はとらない。
07. 災害対策(防災・減災・避難者対策など)を強化する~自然災害から都民の命、財産を守る。
08. 温暖化対策(CO2の排出削減、自然再生エネルギーの充実など)を抜本的に強化するとともに緑と都市農業を守る~地球環境、自然環境を守る。
09. 道路政策(外環道、特定整備路線)を見直す~地域住民の意見に耳を傾ける。
10. 保育士・介護労働者の労働条件を改善し、認可保育園・特別養護老人ホームを充実させる~待機児童、待機高齢者をなくす。
11. 視覚障害者の転落防止のためのホームドアの設置、障害者差別のないバリアフリーのまちづくり~障害者の権利を守る。
12. 羽田空港新ルート低空飛行の実施に反対する~都民の命と暮らしを守る。
13. ヘイトスピーチ対策の強化、朝鮮学校への補助金支給の再開、関東大震災朝鮮人犠牲者の追悼式への都知事の参加、同性カップルのパートナーシップ制度の導入など~外国人を含む都民の人権を守る。
14. 出前福祉制度を導入する~江東区兄弟餓死事件のような悲惨な事件をなくし、福祉の行きとどかない死角地帯をなくす。
ソウル市では、福祉担当者が生活困窮世帯を訪問する出前福祉制度が創設されており、それまで二割だった生活保護の捕捉率が6割まで上昇しています。
15. 都民が一定額の予算の使途を提案し、その提案に対する都民の投票の結果を受けて、都民の代表が予算の使途を決める「都民参加予算制度」を導入する~都民参加型の都政へ転換する。
このような制度は、既にソウル市において実施されています。