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宇都宮けんじブログ
「2017年衆議院解散選挙を終えて」動画コメント書き起こし
10月29日に動画で公開いたしました、宇都宮けんじのコメント「2017年衆議院解散選挙を終えて」をテキスト化いたしました。(文体は多少読みやすく整えてあります)
◆UKpressTV 2017年10年29日「2017年衆議院解散選挙を終えて」全コメント
今回の衆議院選挙の結果は、残念ながら自民党•公明党が衆議院の定数の3分の2の議席を超える議席を確保しました。加えて改憲勢力が8割を超えております。一方で、筋を通した立憲民主党が大躍進したのは非常に良かったと思いますが、いずれにしてもこの選挙結果を受けて、安倍政権は憲法改正の発議を国民投票にかけるということを急ぐことになると思います。これからの戦いというのは、ひとつは「安倍政権に改憲の発議を許さない運動」と「仮に国民投票になったとしても、憲法九条の改正をはじめとする改憲を許さない」、という運動が非常に重要になってくるのではないかと思っております。
与党が圧勝した背景は、民進党が分裂して野党が分裂してしまったことです。もうひとつは、やはり北朝鮮の核ミサイル問題の危機をあおってそれを多くのマスコミが追随してしまったこと。また、相対的に2009年(平成21年)の民主党政権が誕生したときと比べて、経済的に好景気な状況が続いていて、確かに非正規労働者が増えてはおり、失業率も過去最低クラスになっています。こういうところが大きく影響したのではないかと思っています。
今回の投票率は、台風が来ていて天候が悪かったという問題はありますけれど、戦後二番目の低さで53.68パーセントでした。この「選挙」というのは国民主権の行使の重要な機会でありますが、国民のなかで2人にひとりが主権の行使を放棄している、こういう状況が、今の日本の民主主義の状態を反映しているのではないかと私は思います。9月に行われたドイツの連邦議会の選挙は76.2パーセント。それでも低調だと言われております。北欧諸国の投票率は8割〜9割に達するところが多いと言われていますので、やはり「日本の民主主義をもっと鍛えて、重要な主権の行使の機会である選挙権を行使する」、こういう地道な運動が必要なうちのひとつなのではないかと思っております。
日本の投票率の問題は非常に深刻な問題で、「二人にひとりの国民が主権の行使をしていない」、そのような問題というのは非常に重大だと思っております。よく「憲法を守れ」と言いますけれど、日本国憲法の最初の前文には「日本国民は正当に選挙で選ばれた国会の代表者を通じて行動をする」という風に書かれています。つまり、議会制民主主義を謳っているわけです。そしてその「選挙権の行使」というのは主権の行使の重要な機会であるにもかかわらず、国民が二人にひとりしか権力を行使していないというのは、日本の民主主義の未成熟さを表していると思います。
とりわけ今回の選挙では、18歳と19歳の投票率が平均以下になっています。さらに昨年2016年の参議院選挙を経験した19歳の投票率は3割くらいです。しかも、多くの若い人たちの中では自民党の支持層が大半を占めていると言われております。現在のリベラルの運動においては高齢化が目立っております。「いかにして若い人たちにこの運動に参加してもらえるか」というのが大きな課題になっていると思います。
そういう意味では、市民運動も非常に柔軟な対応が求められているし、特に若い人に対する働きかけ、若い人が参加しやすいような運動、それもただ街頭宣伝だけではなくて職場や地域や大学のなかでそういう運動に若い人が参加できるような運動をつくっていけるかどうか、こういうことが問われているのではないかと思います。もちろんその前提として、学校の中での主権者教育が非常に重要です。しかし、残念ながら今の政府は主権者教育をきちんとやろうとしていない。だから結局は運動を行う側がそういう若い人と一緒になって主権者教育をひろげていく、そういう取り組みが重要かと思っております。
現在の状況で言えば5割の人が投票してないのですから、投票する5割を取り合うというような運動も重要ですけれど、5割の投票してない人にいかに働きかけて投票所に足を運んでもらえるかであるとか、もちろん足を運んでもらうときには「人権をまもる•立憲主義をまもる」こういう視点からの投票をお願いできるかどうか、そこに懸かっていると思います。
そういう意味では私は再三言っているのですけれど、米国のバーニー・サンダース氏の選挙というのは投票をするだけの問題ではなくて、その選挙を通じて若い人や低所得者、そして、これまで選挙に行かなかった人を教育をして組織化することが運動となるというものでした。彼は、最初にバーモント州で立候補したときは1パーセントの得票しか得なかったのですけれど、20年後には50パーセント以上の得票を得て、そして、米国共和党の牙城だったバーモント州を、バーニー・サンダース氏の牙城に変えていった。そこから米国の国政にあたる下院議員や上院議員に当選しているので、風を利用して一気に変えるというような短絡的な発想ではなく、「10年、20年のスパンで地道に運動をつくり上げて、そして、保守の支配を本当に変えていくんだ」という、このようなねばり強い運動をやっていくことが、改めて求められているのではないかと思っております。
それからもうひとつは、自民党政権が戦後ずっと続いてきているわけですが、この自民党政権が変わったのは1990年代はじめの細川政権が誕生したときと、それから、2009年の民主党政権が誕生したときの二回だけなんですね。その背景に何があるか。例えば、都道府県議会の定数は今2,657人なんですけれど、そのうち、自民党の道府県会議員は1,330人、これは昨年の12月末の数字ですが、半分が自民党の都道府県会議員になっています。次いで民進党が当時は301人、公明党が208人、共産党が152人です。それから、市町村議会の議員定数は30,332人なんですけど、この内、公明党が2,708人、共産党が2,656人、自民党が1,990人、民進党が722人と続いていますけれど、この市町村議会では公明党や共産党が多いと思われるかもしれませんが、実は無所属の議員が21,465人。三分の二は無所属の議員で、この無所属議員の7割〜8割が自民党系だと言われています。
つまり、自民党の強さというのは都道府県会議員•市町村議会議員にしっかりと根をはっているところにあるということです。与党、特に自民党の選挙のやり方というのは、まず都道府県会議員を通じて票固めを行う、都道府県会議員は市町村議会の議員を通じて票固めを行う、そして、農協や医師会等の業界団体をまわる、こういうような選挙のやり方で票固めを行っております。
これに対してリベラルが国政選挙で勝ち抜くには、やはり地方議会への進出を地道な取り組みでやっていくこと。市町村議会や都道府県議会へ勝ち上がりそして国政に勝ち上がるというような戦い方が必要だと思っています。立憲民主党が今回の衆議院選挙で大躍進しましたけれど、この立憲民主党が本当に大きくなっていくためには、そういう側面での地方議会への進出、それを各都道府県でねばり強くやっていくということが重要になるかと思っております。
結局のところ、私たちはもう少し足腰を鍛える必要があるかと思っています。特に、今の市民運動というものは、まだまだだと思います。そういう市民運動のひとつの在り方として、韓国の市民運動、とりわけ韓国では参与連帯(さんよれんたい)という強力な市民運動組織があります。現在はソウル市内で5階建ての自前のビルを持っていますし、55人の専従活動家をかかえています。会員は14,000人を突破しており、ここ(参与連帯)を中心に韓国全土の市民運動組織が顕密な連帯・連携をとっております。つまり市民運動の力で候補者を押し出していく。場合によれば、市民運動の中から候補者が地方議会へ進出する、都道府県議会へ進出する、さらには国政へも勝ち上がる……。こういう運動をつくれるかどうかが、これからの日本の民主主義が発展するかどうかが懸かっていると思います。
私たちは「希望のまち東京をつくる会」を中心に都政を変える運動をやっています。日本は全国的に、もうすこし足腰……、自分の地域の市町村議会、あるいは都道府県議会、こういうところを「市民の力で変えていく」、それは「選挙で勝ち抜ける」そういう組織を作らなければならない、それが今回の選挙結果によって我々に与えられた課題ではないかと思います。
当面は「安倍政権による改憲の発議を許さない」、さらには「仮に改憲の発議をされても国民投票で勝ち抜く運動」、これは非常に重要なんですけれど、長期的に見たら、本当の意味で、保守の支配を打ち砕くような運動が作れてこなかった、そういうことが大きな問題としてあるんじゃないかと思います。その意味で、もう一度原点に立ちかえって日本の市民運動をたて直していく、つくり上げていく、そういうことが問われているんじゃないかという感想を強く持ちました。