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宇都宮けんじブログ
築地市場移転問題とは?
築地市場の豊洲移転作業をいったん中断し、再検討します。
宇都宮けんじは、「希望の政策」のひとつに、「築地市場の豊洲移転作業をいったん中断し、再検討します。」という項目を挙げています。
この築地市場移転問題は、宇都宮けんじが、2012年の都知事選出馬のときから一貫して掲げてきた重要政策のひとつです。宇都宮は何度も築地市場を視察し、また、移転反対の方々が主催するシンポジウムなどにも参加して、築地で働く方々や関係者の意見を聞き、対話を重ねてきました。
今回の都知事選では、当初、主要3候補者の政策には、この築地市場移転問題が明記されておらず、希望のまち東京をつくる会としては、この問題が都知事選の争点から洩れてしまうことを危惧して、さまざまに声をあげてきました。その結果、テレビ討論でも取り上げられるようになるなど、少しずつではありますが、争点として浮かび上がってきています。今後も、公開討論などの場で、それぞれの候補者が明確な態度を表明し、政策が提示されることを期待しています。そこで、今回あらためて、宇都宮けんじがこだわってきた築地市場移転問題について、要点をおさらいしたいと思います。
そもそも築地市場移転問題とは?
経緯
1935年、築地市場開設。以来、80年にわたって、都民への安定した生鮮食料品の供給という役割を果たし、取扱規模は世界最大級を誇る。
1991年、施設の老朽化や、場内の過密化・狭あい化、衛生管理の問題などから、現在地での再整備に着手。
1996年頃、工事の長期化や整備費の増大、営業活動への深刻な影響など多くの問題が発生し、業界調整も難航。再整備工事は中断。
1999年、東京都と業界との協議機関である築地市場再整備推進協議会において、「移転」へと方向転換すべきとの意見集約がなされる。
2001年4月、東京ガス工場跡地である豊洲地区への移転が決定。
2004年、「豊洲新市場基本計画」が策定される。
2006年、第8次中央卸売市場整備計画で、「新設市場(豊洲地区)の整備に伴い、築地市場は廃止する」と発表された。猛烈な反対運動が起こる。
2007年、豊洲地区の地下水は、ベンゼン、シアン化合物、鉛、ヒ素、土壌はベンゼン、シアン化合物、ヒ素と、環境基準を上回る汚染が明らかになる。(ベンゼンは国の基準の1500倍の濃度の検出)
2009年、東京都議会選挙の結果、移転賛成派の自民党に代わって、反対派の民主党が都議会第一党となる。赤松広隆農林水産大臣(当時)が築地市場を訪れ、安全性が担保されない限り、卸売市場法に基づく許認可を出さない方針を表明。民主党は豊洲移転に替わる案として、晴海地区を利用し、現在の築地市場を再整備する案を表明した。この案には民主党の他、日本共産党も賛成しており、豊洲移転推進派の自民党と公明党は反対を表明。しかしその後、都議会民主党は、都が関係者と合意したことで移転賛成に転じた。
2012年3月、都議会において、市場移転費用を含む新年度予算案が賛成多数で可決し、移転がほぼ確実になる。
2014年2月、舛添要一氏が都知事に就任。豊洲新市場建設工事の起工式が執り行われ、建設工事に着手。
2014年12月17日、新市場建設協議会において、2016年11月7日に豊洲市場を開場する方向で正式に決定。
豊洲地区にはどんな問題があるのか?
1.土壌汚染問題
豊洲用地は、東京ガスの工場跡地であったため、ベンゼン(環境基準の4万3000倍)、シアン(環境基準の930倍)のほか、ヒ素、鉛、六価クロム、カドミウムなどの化学物質が確認されている。汚染原因者である東京ガスは、土地の受け渡しに際して、一度、土壌汚染対策工事を行ったが、東京都による再検査で、日本で最大規模・最高濃度の土壌汚染区域であることがわかった。現在も、土壌汚染対策法に基づく「区域の指定」を受けている。
2.液状化問題
東日本大震災時には、数百メートルにわたって液状化が確認され、汚染地下水があふれ出したが、専門家が目視で「安全を確認した」とされている。指定調査機関の調査がされていない。液状化対策はレベル1(震度5強で最液状化)。
3.2年間モニタリング問題
豊洲用地は、地下水まで汚染されており、本来なら、土壌汚染対策工事のあと、2年間にわたり、環境基準値以下を継続しなければ「区域の指定」を解除することができない。にもかかわらず、建設工事を強行している。
4.地下水の永久管理
深部の汚染地下水が上昇する可能性があるため、街区の周りを遮水壁で囲み、ポンプで水を汲み上げる計画があるが、おそらく不可能ではないかと言われている。
5.濾過海水問題
豊洲新市場では、活魚などで使う濾過海水を、「真水で人工海水を作る」としてきたが、ここへ来て、濾過海水装置を護岸に設置することに変更された。しかし、新市場近辺の海水や海底の汚染調査はされていない。汚染物質が活魚の水槽に入ってくることになったら当然、安全な魚とは言いがたい。
6.土地取引問題
土地取引のやり方も非常に不透明だといわれている。東京ガスとの契約には、瑕疵担保条項がないため、何かあったときに東京ガスが責任をとる必要がない。土壌汚染対策費に関しても、東京ガスの負担は、総額849億円のうち、78億円のみ。
7.物流・施設の構造問題
豊洲新市場は、環状2号線と補助315号線により3つに分断されているため、水産と青果をつなぐ物流動線が存在しない。市場施設は、水平構造であるのが通常だが、豊洲市場は、立体構造であるため、3、4階の積み込み場に荷を上げるだけでも物流コストが大幅に増大する。また、閉鎖型のため、荷下ろしのトラックが市場内に入れず、ドッグシューターが長蛇の列になることも想定される。ピッキングスペース、エレベーター、スロープなども不足している。床積載荷重も700㎏/㎡と小さいため、床が抜ける可能性も指摘されている。
8.環状2号線問題
豊洲新市場へのメインアクセス道路である環状2号線の本格工事がいっこうに進んでいない。東京五輪の選手村を晴海にすることも決まったため、環状2号線の開通は、2020年の五輪開催までに間に合わせなければならなくなったが、環状2号線は、築地市場を貫通する道路でもあり、築地市場の営業中は、環状2号線の本格工事に入れない。こうした状況では、到底、豊洲新市場の開場には間に合いそうもない。
9.予算問題
豊洲新市場の建設費は、2011年には990億円とされていたが、いつのまにか増額され、現在は2752億円にまで膨れ上がった。土壌汚染対策費も当初の542億円から現在849億円になり、移転事業の総予算額は現在5884億円。中央市場会計の破綻が現実味を帯びてきた。
10.卸売市場の再編問題
国は、流通環境の変化に対応するために、全国数ヵ所に中央拠点市場を作り、集約することを目指しており、豊洲移転計画もこの変化の流れを汲んでいる。しかし、集約化が過度に進むと、大手流通業者にのみ都合がよくなり、資本力のない仲卸業者は淘汰されることも考えられる。「食材の評価をし、適正な相場を形成する」という、いわば「目利き」の役割が市場から消えてしまう可能性がある。
希望のまち東京をつくる会は監視と提言を続けます
こうした様々な問題に関して、2016年2月22日、築地市場の関係者や消費者団体などでつくる「守ろう!築地市場パレード実行委員会」は、東京都の舛添都知事宛てに、33項目にわたる公開質問状を手渡しました。それに対して、都は、「回答できない」としています。豊洲新市場のオープン予定日は、2016年11月7日。これだけ多くの問題を抱えたまま、見切り発車で開業してしまうのか……。
希望のまち東京をつくる会は、都知事選期間中も、選挙後も、築地市場移転問題について、監視と提言を続けていきます!
※「豊洲地区にはどんな問題があるのか?」1〜9は、2016年7月8日に行われた「第5回希望政策フォーラム 都政の“困った”が希望に変わる東京へ」における中澤誠(東京中央市場労働組合執行委員長)のスピーチ「築地市場移転問題と新自由主義」配付資料を参考に作成。
「築地市場移転問題と新自由主義」配付資料
「築地市場移転問題を争点化せよ!」都庁前アクション 2016年7月20日より中澤誠氏と宇都宮けんじ
第5回希望政策フォーラム「都政の“困った”が希望に変わる東京へ」の模様
中澤誠氏のスピーチは23分頃から