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宇都宮けんじブログ

18歳からわかる! 都知事選挙

2016年7月23日(土)、東京・文京区民センターにて「18歳からわかる! 東京都知事選挙」(主催:「私が東京を変える」)が開催され、宇都宮けんじが特別コメンテーターとして参加しました。定員200人の会場はあっという間に満席という盛況ぶりで、10~20代の参加者も多く見られました。マスコミ各社も取材に来ており、宇都宮けんじへの関心の高さも窺えました。主催者挨拶に続き、「東京都政基礎知識」を学ぶクイズコーナーからスタートしました。

20160723

Q1. 東京都の人口は?
A1. 1361 万人

Q2. 東京都の年間予算は?
A2. 約 13 兆 6000 億円(スウェーデンの国家予算、約 10 兆 5000 億円より多い!)

Q3. 都知事の給料は?
A3. 2200 万円

Q4. 都知事は週休何日制?
A5. 決まっていない。何日登庁して何時間職務するかも自由。

といったクイズが出題されました。宇都宮はほぼ全問正解でしたが、“ひっかけ”の知事の週休何日制か、という質問にはみごとにひっかかっていました。会場のみなさんも都政に関心ある方々が多かったようで、正解が多く見られました。東京都の年間予算は、小さい国家と同程度ということにあらためてみなさん驚かれていたようです。都知事を選ぶことは、大統領を選ぶことと同じくらいの重さがあるのですね。

次に、これまでの都知事を振り返りました。1947年から現在まで都知事経験者は8人。この中で、最長期間務めたのは、鈴木俊一(すずき しゅんいち)氏(1979年4月~1995年4月)です。私たちの記憶に新しいのは、青島幸男(あおしま ゆきお)氏、石原慎太郎(いしはら しんたろう)氏、猪瀬直樹(いのせ なおき)氏、舛添要一(ますぞえ よういち)氏の4人ですが、周知のとおり、猪瀬氏、舛添氏は、スピード辞任しています。宇都宮けんじは、「政策をちゃんと実行するには、1~2期は必要です」と言います。次の都知事は果たして任期を全うすることができるのでしょうか。

また、宇都宮けんじは、13年半続いた石原都政について、「東京都政は、石原氏から大きく変わった。都民の暮らし、福祉が軽視され、五輪など派手な都市外交になった。これからそれを大きく変えていくべき」と語りました。

政策で候補者を考えてみる

まず、「都民・有権者の関心」についての調査(2016年6月18日実施/インターネット意識調査/希望のまち東京をつくる会独自調査)結果から見ていきます。

最も関心が高かったのは、「税金の無駄づかい」(37.9%)で、「政治とカネ」(23.2%)、「子育て・少子化対策」(22.4%)、「景気対策」(19.2%)、「東京五輪」(17.4%)、「高齢者福祉・介護」(17.0%)と続きます(複数回答)。会場に聞いてみると、「子育て・少子化対策」「高齢者福祉」に関心がある人が多く見られました。

次に、世界の大都市で、次々と、住民の暮らし・福祉に寄り添う公約を掲げた首長が誕生しているという事例の紹介です。アメリカ・ニューヨーク市長に2014年に就任したビル・デブラシオ氏は、富裕層への課税、質の高い低廉な医療、低所得者向け住宅建設、マイノリティ人権擁護、20万人の雇用創出などの公約を掲げています。また、イギリス・ロンドン市長に2016年5月に就任したサディク・カーン氏は、パキスタン移民2世で、労働・人権問題の弁護士。低所得者向け住宅建設、市営交通の値上げ凍結、「生活賃金」実現など。

スペイン・バルセロナでも、市民運動出身の女性、アダ・コラウ氏が2015年5月、市長に就任し、学校給食無償化やホームレス支援などの公約を掲げています。「どの方も、きわめて真っ当な政策ですね。こういう政策ができれば暮らしやすい都市になる」と、宇都宮も共感しきり。ニューヨークやロンドンで低所得者向け住宅建設が大きな争点になっていることが、今後の東京都政を考える上でも学ぶべきポイントになりそうです。

都知事選挙の争点

今回の都知事選において、宇都宮は3つの争点を取り上げました。

争点その1は築地市場移転問題。

この問題については、宇都宮は、一回目の出馬時から重要政策のひとつとして訴えてきました。その甲斐あってか、今回、選挙戦に入ってから少しずつこの問題が争点として浮かび上がってきました。すでに6000億円をつぎこんだこの計画は、「都市再開発か、まちのにぎわいか」の分岐点であり、都民の「食の安全」への不安などが問題点として挙げられます。この問題について、小池百合子(こいけ ゆりこ)候補、上杉隆(うえすぎ たかし)候補は現地を視察し、上杉候補は見直しを提案、鳥越・俊太郎(しゅんたろう)小池候補は慎重姿勢を見せています。

争点その2は「政治とカネ」。

都民の関心度も高く、舛添知事辞任の背景でもあります。この問題について、増田寛也(ますだ ひろや)候補は言及なし。上杉隆候補、マック赤坂(あかさか)候補は「知事給与ゼロ」を訴えています。鳥越候補は、「海外視察費用、公用車利用のルールの徹底」「視察などの情報公開の徹底」などを公約に掲げています。小池候補は、「都政の透明化」「都知事報酬の削減」という2項目が挙げられています。「本来、知事のこういう問題をチェックするのは議会の役割のはずですが、都議会じたいもリオの視察で莫大なカネを使おうとしていた。徹底した情報公開が必要です。そのためにも、私は、都民評議会、あるいは行政監視オンブズマンという提言をしました。強力な権限をもった、議会・職員以外の都民の機関が必要です」と宇都宮はコメント。今回の候補者の中には、「都民参加型」の政策が見当たらないのが残念です。

争点その3は「横田基地オスプレイ配備」。

2016年から東京・横田基地にオスプレイが配備されることになっている問題です。事故率が高いオスプレイは沖縄でも強い反対と抵抗を押し切って配備されています。地元の福生(ふっさ)市は受け入れ反対。横田基地は住宅地にあり、非常に危険なことはもちろん、横田基地が米軍の作戦拠点として再整備される問題、などもあります。「沖縄では翁長雄志(おなが たけし)知事が、県民の命・暮らしを守るために国と全面対決しています。東京も同じです。都知事が、都民の命・暮らしを守るため、横田基地の問題を国やアメリカ当局に対して申し入れを積極的にすべき。そういう知事が誕生することを期待しています」と宇都宮はコメント。しかし、今回の候補者の中には、この問題を公約に掲げている人が見当たりません……。

そのほか、都政の「困った」はまだまだあります。希望する保育園に入れない、夜間定時制高校がつぶされてしまう。学費が高くて学び続けられない。賃金は安いのに家賃が高い等々。なかでも、宇都宮は、住宅問題に注目している、と発言。「都営住宅は石原都政以降、あらたな建設が一戸もなく、都営住宅入居の倍率は30倍になっている。質が良く、家賃が安い住宅で人間らしい生活を営むということは当然の権利です。海外でも公営住宅は大きな政策のテーマになっています。ソウルではパク・ウォンスン市長が87000戸の住宅を供給しました。東京で実現できないわけがありません。全力をあげて住宅建設および家賃補助制度も進めていく必要があります。『住まいは人権』という思想を導入する必要があります」。

また、東京都は、数千億円という膨大な予算をかけて道路建設や都心の再開発などを進めていますが、これに対しても宇都宮は苦言を呈します。「1500億円あれば、待機児童は8000人解消できる。また、14000戸の都営住宅が建設できる。道路建設を見直せば、福祉を充実することができるんです」。候補者の方々には、ぜひこれらの政策を取り入れてほしいものです。

各候補者の公約

小池候補の特徴は国家戦略特区など、鳥越候補は宇都宮の政策集を踏襲し、福祉・憲法重視、増田候補は開発路線と、それぞれの方向性が見えてきます。真っ赤になるほど赤入れした選挙公報を片手に、宇都宮が指摘します。「大きな違いは、開発重視か福祉重視か。重要なのは、財源をどうするかということです。有権者の目は厳しくなっているので、公約をちゃんと実現できるかどうか、財源の裏づけが必要ですが、果たして候補者はそこまで語っているか。韓国では、候補者が政策を掲げるときの『家計簿』を出すことが要求されています。それができなければ信用されない。このように、有権者の意識が高まれば、候補者も真剣に考えるようになるはず」。

さらに、「ひとつの国家と同じくらいの規模の選挙なのだから、東京都の都知事選は政策討論が重要。もっと、有権者がじっくり選択できるような時間と機会、とりわけ公開討論会を長期にやる必要がある。それがないから、どうしても名前の知られた著名人が有利になってしまう。選挙のあり方をもっと考えなくては」と強調しました。

また、「前回の選挙で私たちは、動物殺処分についての政策を掲げましたが、今回、動物殺処分の問題を主要候補の方々も多く取り上げるようになりました。最初は小さな『困った』でも、声をあげていけば、こうして大きな問題として注目が高まっていく。選挙は、ある問題をアピールする絶好の機会なんです」と、選挙運動の別の側面の重要性についても指摘しました。

宇都宮けんじ、一問一答(質問は司会者)

──これまで2回、都知事選に立候補してきましたが、宇都宮さんにとって「東京」とは?

東京は、私の人生で最も長く暮らしている街です。第二の故郷と言ってもいい。その東京で、貧困と格差が広がり、「困った」が増えていることを大変危惧しています。東京は可能性がある街なので、行政がしっかりすれば変えていくことができると思い、都知事選に2回挑戦しました。都知事選をたたかって、私の東京に対する見方もずいぶん変わりました。これからも、ボランティアの方々、選対メンバーとのつながりを大切にしながら、東京を変えていくことをライフワークにしたい。さらに新しいつながりも作っていきたいです。

──『“困った”を希望に変える東京へ』のキャンペーンを、私たちは続けてきました。その中で、一番印象に残ったことはなんですか?

子どもの貧困です。子どもは生まれる場所を選べない。それなのに差別されたり教育が受けられず貧困が連鎖していく。本来、東京都は、子どもの貧困を十分に解決できる力があるはずなのです。子ども食堂などをNPOがやっていますが、本来なら東京都がやるべき。財源もあるはずです。こんな豊かな国で子どもの貧困を放置していいのか、と大きな怒りを感じます。だから、今回、私の政策では、子どもの給食費の無償化を訴えました。給食がない夏休み冬休みでも、学校に行けばごはんが食べられる。東京より財源が少ないソウル市でも、パク・ウォンスン市長がそれを実現している。東京でも可能なはずです。また、教育も重要です。今回の候補者は、待機児童の問題や給付型奨学金など、福祉の問題に触れている方は多い。教育にこそ予算をつぎ込むべきです。OECDの中で、日本の教育予算は最低レベル。これは国家的な問題ですが、それを防ぐ力が東京都にはあるのだからやるべきです。

──候補者、選挙に期待することは?

堂々と政策で勝負すべきですね。テレビの公開討論も、たとえ辞退する人がいても、やるべきです。前回の都知事選では、テレビ討論が16回もキャンセルになりました。チラシは30万枚しか配布できず、ネット選挙はまだまだ高齢者がついていけないという現状なのだから、テレビ討論はやはりとても大事なのです。討論の中では、財源はどこから、といった話題も当然出てくる。それで候補者も鍛えられます。ところが今のような状態では、それができない。

有権者が変えていくという努力も必要ですが、テレビ局の社会的公共的責任という意味でも、テレビ公開討論は義務化すべきだと思います。それと、供託金を出さないと立候補できないというのもおかしい。都知事選の供託金は300万円です。これは世界一高い。欧米のほとんどの国では、供託金ゼロで立候補できます。300万円では、生活保護者や貧困者は立候補できません。また、被選挙権と選挙権の年齢も、多くの国では同じですが、日本は違う。日本の選挙制度は実に多くの問題を抱えています。

国民主権というのは、憲法で定められているとおり、選挙で選ばれた代表者を通じて行使されます。そしてその代表者を選ぶルールは何かというと、公職選挙法に行き着きます。公選法は「べからず集」で、規制ばかり。その結果、おざなりにされてるのは主権者や有権者です。有権者は知りたい情報すら与えられない。本来、選挙は、候補者ではなく有権者が主人公なのです。その主人公の権利を妨げているのが、今の非民主的な公職選挙法です。今、私は、「世界一高い供託金は違憲である」という裁判をやっています。私たちは「おかしい」と思ったらすぐ立ち上がるんです。(会場から大きな拍手)公職選挙法の民主化なしでは政治は変えられれない。それを日本の市民運動は担っていかなければなりません。国民主権の行使のルールがどうなっているかということについても、もっと関心を持つべきだと思います。

──宇都宮さんは、18歳の頃はどんな少年でしたか?

ほとんど政治に興味はなかったですね。受験勉強と卓球ばかりでした。日韓条約(日韓基本条約)が締結された年(1965年)で、大学の寮では議論が盛んでした。ベトナム戦争も始まるころで、社会問題が耳に入ってきました。そこでどういうふうに生きるかを考え始めました。

ある日、部落問題研究会の部室を覗いてみたことがきっかけで、『わたしゃそれでも生きてきた』という被差別部落で育った12人の女性の手記集に出会いました。フォークシンガーの岡林信康さんが、この本を題材に『手紙』という歌を作っています。ショックだったのは、全部ひらがなの手記があったことです。貧しすぎて、学校に通えず、字を書けないまま、大人になった。初めて覚えたひらがなで手記を書いたのです。

私の親も高等教育を受けておらず大変貧しかったけれど、字は書けました。字を書けないほどの貧困が存在するのかと驚きました。社会的差別についても、教科書では知っていましたが、現在もあるのだということをそのときまで知らなかったのです。自分がこのように進学できたことは、本当に恵まれていただけにすぎなかったと自覚しました。その頃、弁護士を目指す先輩が、「弁護士になれば、いろんな人の助けになることができる」と話していて、自分も弁護士を目指そう、と思うようになりました。

──若い参加者にメッセージをお願いします。

今、若い人は大変な状況にあります。日本の20代の若者の死因は、2人に1人が自殺だそうです。若者が夢や希望を描けない社会はおかしい。これが運命だなどと悲観する必要はありません。私は、人間が作った制度は人間の力で変えられると確信しています。社会制度は変えられる。みんなで声をあげて社会の問題を変えていこうという人が増えれば日本は変わります。そのひとつが、投票です。各候補者の政策をよく読んで投票に行ってください。みんなで声を上げ、“困った”を変えていこうという人が多くなったら日本は変わります。そこに希望があります。

宇都宮の力強い言葉でイベントは終了しました。次回イベントをお楽しみに!

「希望のまち東京をつくる会」にご参加を!

希望のまち東京をつくる会では、あらたに参加してくださる仲間を募集しています。イベン トや勉強会の企画・運営、イベント時の保育やノートテイク、講演文字起こしなどのボラン ティアも大歓迎です!選挙が終わったら 4 年後に会いましょうという運動ではなく、選挙が ないときにも都政を監視し、学んでいきましょう。 ぜひみなさん、希望のまち東京をつくる会にご参加を!


「18 歳からわかる! 東京都知事選挙」の模様
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