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宇都宮けんじブログ

現在都議会に提出されている 迷惑防止条例改正案の問題点について

 

現在 都議会に提出されている「迷惑防止条例改正案」の問題点について。

2018.3.20 弁護士 宇都宮健児

 

1.現在都議会に提出されている迷惑防止条例改正案(以下「条例改正案」という)の概要は、

(1)盗撮行為における「規制場所等」の拡大

(第5条第1項第2号関係)

(2)つきまとい行為における「行為類型」の追加等

(第5条の2関係)

(3)つきまとい行為における「罰則」の強化(第8条関係)

となっています。

このうち、(2)のつきまとい行為における「行為類型」の追加等(第5条の2関係)に関しては、現行の4類型(つきまとい、粗野・乱暴な言動、連続電話、汚物の送付)に加えて、

①監視していると告げること

②名誉を害する事項を告げること

③性的羞恥心を害する事項を告げること

の3類型を追加しようとしています。

また行為類型の一部追加として、

①現行1号に規定するつきまとい、待ち伏せ、立ちふさがり、住居付近の見張り、住居等への押し掛けに加え、「みだりにうろつくこと」

②現行3号に規定する、連続の無言電話、拒まれたにも関わらず連続電話、FAXの送付に加え、(拒まれたにも関わらず)「電子メールの連続送信」「SNS等の連続送信」をそれぞれ追加しようとしています。

 

2.条例改正案と同様の内容は、ストーカー規制法にも盛り込まれていますが、ストーカー規制法は、規制対象を「恋愛感情の充足を目的とした行為」に限定しています。

都の迷惑防止条例第5条の2の「つきまとい行為等の禁止」は、「正当な理由なく、専ら、特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的とした行為」が規制対象になります。

正当な理由があるか否かは現場警察官の判断に委ねられるほか、「悪意の感情を充足する目的」があるかも内心の感情であり、解釈は難しく、このままでは恣意的な運用が行われる危険性があります。

 

3.「名誉を害する事項を告げること」を追加することの問題点

刑法上の名誉毀損罪(刑法230条1項)にあたらない行為を処罰可能にしようとしていることです。

刑法の名誉毀損罪は「公然と人の社会的評価を低下させること」が要件な上に、被害者の告訴が必要ですが、条例改正案では、告訴が不要で「公然と」は要件となっていません。

国会前や路上で「安倍ヤメロ」などと首相を批判したり、労働組合が社前集会で会社を批判したり、マンション建設に反対する住民がチラシをまいたり、消費者が企業の商品の不買運動を呼びかけることなども規制対象になりかねません。

また、行為の形に関する制限もないので、SNSでの発信も規制対象になる可能性があります。

 

4.「監視していることを告げること」「みだりにうろつくこと」を追加することの問題点

張り込み取材やオンブズマンの監視活動も制約される可能性があります。

 

5.さらに、問題なのは、このような改正を必要とする立法事実が全く示されていないことです。

 

6.今回の条例改正案は、憲法が保障する国民・市民の言論・表現の自由、知る権利、報道の自由、労働組合の団体交渉権などを侵害する上に、市民運動、労働運動、報道活動に対し警察権力の介入を容易にする道を開こうとするものであり、容認することはできません。

条約改正案は、3月19日(月)の都議会警察・消防委員会でわずが1時間ほど審議され、3月22日(木)には委員会採決、3月29日(木)定例会最終日の本会議で採決される段取りとなっており、施行は今年の7月の予定だということです。

正当な市民活動にも警察の介入を招くおそれのある条例改正案に、断固反対の声を上げていきましょう。

 

  2018年3月20日 希望のまち東京をつくる会 代表 宇都宮健児