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宇都宮けんじブログ

卸売市場法の改正について

 「卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律」が、あまり注目されることなく、またほとんどの生産者、市場関係者、消費者、国民に知られることなく、2018年6月15日参議院で可決され成立しました。
 わが国の卸売市場制度は、1918年に起きた米騒動事件をきっかけにしてつくられた制度です。米騒動事件をきっかけに、公設市場創設の議論が一気に高まり、1923年に中央卸売市場法が成立し、日本各地に中央卸売市場が誕生することになりました。
 生鮮食品を扱う卸売市場は、「セリ」による「完全競争原則」を貫いた価格形成によって、大資本による独占・寡占を許さず、農・漁業者などの生産者や実需者、消費者が信頼できる適正な価格形成を行ってきたことで、農・漁業や地域経済を支え、日本の多様な生鮮食品流通を通して日本の豊かな食文化を育んできました。
 今回の卸売市場法の改正により、国や自治体などの公的関与が弱まり、外資を含めた法人である者が、農林水産大臣の「認定」を受ければ、既存の卸売市場の「開設者」になることができるようになります。また、市場開設地方自治体の議会の承認を得ていた「業務規定」が、民間資本の都合のよいように改変される危険が強まります。
 さらに、セリ制度の公平性を支えていた「第三者販売の禁止」「直荷引きの禁止」「商物一致原則」などが法律の条文から削除され、市場の開設者の判断に任されることになりました。これでは、資本力の大きい流通資本が大量の生鮮食品を買い集めることができるようになり、「差別的取り扱いの禁止」規定は空文化してしまいます。
 今回の卸売市場法の改正は、農・漁業者の暮らしと生業に大きく影響し、仲卸業者がないがしろにされ、八百屋、魚屋、飲食店など商店街・地域経済も大きく影響を受けることになります。
 現在問題となっている築地市場の豊洲移転政策は、仲卸業者の切り捨て政策であり、そのことは、農・漁業者など生産者や仲卸業者から生鮮食品を買い受けていた八百屋、魚屋、飲食店など商店街・地域経済を切り捨てる政策でもあります。このことは、今回の卸売市場法改正の問題点と一致しています。
 仲卸業者を守り、場内・場外の業者を守り、生産者である農・漁業者を守り、八百屋、魚屋、飲食店など商店街・地域経済を守り、日本の食文化の伝統を守るためにも、築地市場の豊洲移転を阻止しなければならないと考えます。また、築地市場の豊洲移転を阻止し築地市場を守っていくことが、今回の卸売市場法の改正で骨抜きにしようとしている日本の伝統的な卸売市場制度を守っていく闘いにつながっていくものと確信しています。

2018.7.12 希望のまち東京をつくる会 代表 宇都宮けんじ