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宇都宮けんじブログ
民営化を推進する改定水道法施行へ向けたパブリックコメント(2019年8月20日締め切り)に対し市民の声を届けよう!
水道は私たちの生活、生命を支える貴重なインフラです。東京都を始め、日本の水道事業は、自治体など公共によって担われてきました。水質や安定供給、漏水率の低さなど世界最高水準を誇ってきました。一方では、配管など施設・設備の老朽化や更新の問題、人口減少地域における採算の悪化や料金の高騰などの問題もあります。
政府は、これらの問題を、「官民連携」の名の下に、民営化や水道事業へのコンセッション方式(施設運営権を民間企業に売却すること)によって解決しようとしています。
昨年(2018年)12月には、多くの人々の反対を押し切って水道法の改定が強行され、コンセッション方式を用いた水道民営化が容易になってしまいました。今後は東京都など自治体ごとの判断を迫られますが、この水道法の改定の施行に向けたパブリックコメント(意見公募)が、政府により、2019年8月20日(火)締め切りで現在行われています。そして今年10月からは改定された水道法が施行される予定とのことです。
この間、希望のまち東京をつくる会では、市民講座なども開いて、水道事業に詳しい方などの話をうかがってきました。その中で、民営化やコンセッション方式などの問題点も明らかになってきました。
公共のものである、そして住民の生存権にも関わる水道事業やその運営権を営利企業に売り渡してよいのでしょうか。水道事業の民営化が行われたヨーロッパの多くの都市では、その弊害が明らかになり、パリ市やベルリン市など多くの自治体で再公営化がなされています。日本はその失敗した水道民営化の誤りをこれから繰り返してよいのでしょうか。
水道事業の在り方に対しては、皆さんそれぞれ意見や考えがあるでしょうし、東京都をはじめ日本の水道事業の現状がわからない方々も多いと思います。しかし、このパブリックコメントを、市民の声を聞いたというアリバイ作りにさせないためにも、水道事業の民営化や運営権売却に対する、多くの市民の疑問や批判の声も届けましょう。黙っていてはそれを認めることにもなってしまいます。
なおこのパブリックコメント自体は、細かく分かれていて、非常にわかりづらく、かなりの長文のものもありますが、下記の「官民連携に関する手引き(改訂案)」や「運営権の設定に係る許可に関するガイドライン(案)」などが重要と思われます。個々の細かい内容も重要ですが、それにとらわれず、水道の民営化やコンセッション方式、運営権の売却に対する端的な疑問や反対の声など、あるいは「もっと市民にわかりやすいパブリックコメント募集にしてほしい」など、パブリックコメントの在り方自体に対する批判でもよいと思います。私たち市民の率直な意見を表明しましょう。
「水道事業における官民連携に関する手引き(改訂案)」に関する御意見の募集について
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190137&Mode=0
「水道施設運営権の設定に係る許可に関するガイドライン(案)」に関する御意見の募集について
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190136&Mode=0
「水道施設の技術的基準を定める省令の一部を改正する省令(案)」に関する御意見の募集について
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190134&Mode=0
「水道の基盤を強化するための基本的な方針(案)」に関する御意見の募集について
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190135&Mode=0
「水道法施行規則の一部を改正する省令(案)」に関する御意見の募集について
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190133&Mode=0
本件に関して、内田聖子(PARCスタッフ/希望のまち東京をつくる会政策チーム)より、コメントです。
(1)今回のパブコメの構造
現在、厚労省が行っているパブコメは計5本。いずれも2018年12月の水道法改正を受け、2019年1月以降に厚労省がより具体的な政策に向けて委員会を組織し、検討を重ねてきた結果です。「10月1日施行」というスケジュールは法改正可決後にほぼ確定されており、それに沿って進められてきました。
この検討のプロセスは、2つの柱から成ります。一つは、もともとの水道法改正の目的として挙げられていた、「水道事業の基盤強化」に係る検討。これについては「水道事業の維持・向上に関する専門委員会」が持たれ、水道法第5条「基本方針」の具体的な内容を検討しています。この委員会には、全水道など労働現場の代表も参画するなどもあり、十分ではありませんが現場の声を聞きつつ一定レベルの内容が確保される見通しです。
しかし、今回の法改正が「水道民営化法案」と呼ばれた理由は、第24条「運営権の設定(コンセッション)の設定」です。こちらに関しては、2019年2月、厚労省「水道施設運営等事業の実施に関する検討会」を設置し、「水道施設運営権の設定に係る許可に関するガイドライン」や、並行して刷新される「水道事業における官民連携に関する手引き」などを検討してきました。上記「基本方針」の委員会と異なり、「コンセッション検討会」には労組も含まれず、議事録等を見ても「コンセッションありき」という前提の議論がなされてきました。
つまり、5本あるパブコメのうち、優先的に応えるのだとすれば、「基本方針」に係るものではなく、「コンセッション方式」の導入に直接関連するものを応える方がよいでしょう。もちろん、5本すべてに応えられる人は応えた方がいいでしょうが、基盤強化については水道の実態がわからないとなかなか応えられないこともありますから。
5本あるパブコメのうち、コンセッションに係るパブコメとは以下の2本です。とにかくこの2本については何らかの意見表明をするべきと思います。
「水道事業における官民連携に関する手引き(改訂案)」に関する御意見の募集について
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190137&Mode=0
「水道施設運営権の設定に係る許可に関するガイドライン(案)」に関する御意見の募集について
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190136&Mode=0
(2)パブコメに記載する内容
まずは市民からの懸念表明としては、皆さんが政府提案資料を読んで、率直に思ったこと、疑問、懸念を書くことを基本とするのがよいと思います。しかしながら、何の参照や参考もないと時間もないし書きにくいと思うので、下記のPARCの関連資料を共有します。
PARC新作DVD「どうする?日本の水道~自治・人権・公共財としての水を~」
http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/suido.html
PARCの新作DVDの資料も、こちらから無料でダウンロード・コピー可能です
http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/siryou/suido.pdf
内田からのコメントは、以上になります。
なおこのパブコメに対する文面案がNPO法人AMネットに掲載されておりますので、参考になさってください。
①Facebook:【8/20〆切】水道民営化を進める、改正水道法の10月施行に向けたパブコメが始まっています。
http://urx.space/0ivs
②blog:水道民営化すると→プレイヤーが増え、より複雑に。想定外への対応が遅れる。競争がなくなる。コストが上がる。サービスが不安定になる。台風で露呈した関空コンセッションの危うさ、などAMネット会報記事より
http://am-net.seesaa.net/article/468665935.html
なお水道民営化の問題点がよくわかるDVDや書籍としては、他にも下記のものなどがあります。
ドキュメンタリー映画「最後の一滴まで―ヨーロッパの隠された水戦争」
http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/uptothelastdrop.html
内田聖子[編著]新刊書籍 『日本の水道をどうする!?民営化か公共の再生か』
http://www.commonsonline.co.jp/new_books/2019/08/02/nihon_no_suido/
四六版/252ページ/本体1700円+税 コモンズ刊/2019年8月