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宇都宮けんじブログ

第2回 ZOOM政策トークライブ「東京は安心して暮らせるまちですか?―コロナ禍と貧困、住まいの権利」(2020年6月25日)のご報告

「東京は安心して暮らせるまちですか?―コロナ禍と貧困、住まいの権利」

開催日時:6月25日(木) 20:30~21:00

ゲスト:稲葉剛さん
一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人、生活保護問題対策全国会議幹事、いのちのとりで裁判全国アクション共同代表、一般社団法人ホームレス問題の授業づくり全国ネット理事、一般社団法人自由と生存の家理事、認定NPO法人ビッグイシュー基金理事

今回は、ZOOM政策トーク第2弾として、宇都宮けんじの重要政策の一つである住まいの貧困の問題を取り上げ、長年にわたって路上生活者の支援や住まいの貧困問題に取り組んできた稲葉剛さんをゲストに迎えて、宇都宮と対談しました。なお宇都宮と稲葉さんは、長年一緒に反貧困活動に取り組んできた仲間でもあります。

4月18、19日に宇都宮も参加して開催された全国の法律家による「命と暮らしを守る」という電話相談会では、全国から5000件もの相談があり、電話に出られない数も含めると42万件のアクセスがとのことです。その相談内容というのも、収入がゼロになったとか、家賃が払えないといったような、悲鳴に似た相談というのが全国から寄せられました。この電話相談会の結果を受けて、厚生労働省に対して貧困対策の強化を求めました。この相談でも、住まいに関するものだけで非常に深刻な状況。とくに自営業やフリーランスの方が、収入が激減して家賃が払えないという相談が、世代を問わずきているという状況で、住まいを既に失ってしまってる人が東京にはたくさんいる。路上だけでなく、ネットカフェやサウナ、カプセルホテル、あるいは友達の家を転々してるといったような人々もたくさんいるいうのが東京の現状。東京都の調査でも都内で約4000人がネットカフェや漫画喫茶などで寝泊まりをしているという実態が明らかになった。そのうち半数が実は若者、20代30代だということが分かっていて、平均月収114000円でに非常に低いワーキングプアの方々多い。東京はどうしても家賃が高いので、ネットカフェから抜け出せない。アパートを借りるにも、敷金礼金と20万円ぐらいかかりますので、そこに対する支援がないと、この方々はやはりネットカフェから抜け出せない…という状況が、ずっと前からありました。稲葉さんは、とくに東京においては、家賃の高さとか初期費用の高さに対して、行政がきちんと対応しないとこうした問題が解決できないと考えています。 しかもコロナ禍のなかで、4月8日から5月の下旬までの緊急事態宣言中は、都はネットカフェに対して休業要請を出し、ネットカフェで寝泊まりしていた人々は追い出されてしまった。稲葉さん達は、「つくろい東京ファンド」という団体を作り、ネットカフェから出される人達の SOS を受け止めて、緊急的な支援活動を行ってきました。

 そうした状況に対して、稲葉さん達は4月の頭から、緊急事態宣言が発令されるとこういう事態が起こるだろうということが十分予測できたので、都内のホームレス支援団体の連名で、4月3日に東京都に対して緊急的な支援、諸外国で行われているようなホテルの提供を行ってほしいという要望を出しました。それに答えるかたちで、約1230人の方が、東京都が提供したビジネスホテルに宿泊するということになりました。しかし、この東京都の緊急対策は問題だらけでした。

 実際に都の支援を受けられた方というのは、その3割、1200人程度でした。7割もの人たちが支援を受けられなかった。
 もう一つの問題としては、都内で生活保護を申請をした人がほぼ自動的に民間の宿泊施設に送られる、という対応を取る自治体が多い。都内には、いまだに20人部屋という、いわゆる貧困ビジネス、非常に高額の利用料を取りながらも劣悪な環境しか提供しない、そういった施設が多数あります。そうした施設に入れられてしまった方もいた。これは本当に矛盾した対応で、東京都はネットカフェの居住環境が感染症リスクという観点から適切ではないということで、ネットカフェを休業にしたわけです。けれども、そこから出された人たちに対して、各区各市がネットカフェよりも居住環境の悪いこうした民間の貧困ビジネス施設に送り込むということが行われたわけです。稲葉さん達は、東京都とずっと交渉を行ってきた結果、ようやく4月17日になって、厚生労働省と東京都が新規に申請する人については今後原則個室対応にしなさい、そして相部屋の施設ではなくて個室のところに入れなさい、という事務連絡をようやく出しました。

 さらに民間の支援団体の活動にも妨害をするようなことを東京都は行っている。都庁の下のところで、毎週土曜日に「新宿ごはんプラス」とNPO 法人もやいによる炊き出しと相談会が開かれているが、都は大雨が降った日にも、都庁の下の敷地を使わせない、炊き出しを行わせないという姿勢を崩していない。ぜひいまの小池都政の問題として、多くの人たちに知っていただければと思っておりますと稲葉さんは述べました。
 生活保護の申請を受け付けないという水際作戦という問題が元々あったが、それがさらに激化し、悪化しているとのこと。宇都宮さんが都知事になられたら、ぜひこうした区や市の水際作戦をなくすという姿勢を都として示していただければと思っておりますと稲葉さん。

 稲葉さんが、宇都宮に期待する政策としては、まず都営住宅を増やすということ。東京都は過去20年間、石原都政のときから都営住宅の戸数を増やさないという政策をとってきた。新たに作るだけでなく、空き家や空き室を活用した、新たな公共住宅を作って欲しい。そうした政策はすべて宇都宮さんの政策のなかに盛り込まれているが、こうした都の住宅政策を根本的に転換してほしいと思っていると稲葉さん。また、高齢者、障害者、外国人、LGBTの方々は、民間のアパートに入るときに、やはり入居差別を受けるという問題があり、こうした入居差別を規制するような条例も作っていただきたい。また、生活保護の問題については、やはりたらい回しの問題、水際作戦の問題というのがありますので、例えば、都の保護課のなかにフリーダイヤルの電話を設置して、各区各市の窓口が変な対応したら、追い返されそうになった人がそこに電話して、都がすぐに是正させる。都が区や市の姿勢を是正させるといったようなことも、宇都宮さんが都知事になれば実現できるのではないかと期待をしております。そうした様々な反貧困の政策を実現することによって、住まいは人権という社会が実現できるのではないかという期待を寄せておりますので、ぜひ頑張っていただきたいと願っておりますと稲葉さんは述べました。

そして以下のような会話が交わされました。

宇都宮は、「ご飯プラス」と「もやい」がやっている大雨の中の炊き出しを都が追い出すというのは、これはやってはならないこと、非人間的な対応で、むしろ、そういう人の支援は、東京都自身がやらなければいけないことを民間の人が代わって行っているのに、あまりにも酷い対応だなと思うと述べました。そして都営住宅の建設は進めなければいけないのですが、建つまで時間がかかりますので、家賃補助制度を導入しようと思っているが、諸外国のそういう制度とか外国ではこういう補助制度導入されているとか、その辺を調査されたことはありますかと、稲葉さんに問しました。

稲葉 アメリカでも家賃補助制度はありますし、ヨーロッパ各国には家賃補助制度だったり、あるいはドイツでは社会住宅というようなかたちで、民間の協会やNPOなどが住宅を建設するのに政府が補助するというかたちで、低廉な住宅を市場に供給するという政策が取られています。日本の、やはり特に東京の賃貸住宅市場というのは本当に野放し状態になっています。この20年間、収入が増えない、所得が増えない、むしろ平均所得が下がってきているにもかかわらず、家賃だけがどんどん上がっている。そういう状況はやはり変えていただきたいと思っています。
 東京のような家賃の高い大都市でこそ、家賃補助だったり、あるいはコロナの影響で住まいを失う方々が増えているので、政府に対しても、みなし仮設〔住宅〕方式、災害時のように行政が住宅や空き家を借り上げて提供するという施策が必要だ…という風に言ってはいるのですけれども、なかなか政府が動いてくれない。そのなかで都としても考えていただければと思っています。

宇都宮 災害救助法ではみなし仮設の一環として、既存の家を借り上げて被災者に提供する。同じような考え方で、住まいがいま持てない人に対して提供する。新たに建てて提供するのと同時に、同じ考え方で、災害救助法の考え方でやるという方もあります。だから、いろんなかたちで、しかも既存の住まいがあるわけだから、やろうと思ったらすぐできる。家賃補助についても、一定の予算計上と一定の基準とか作れば、それぐらいの予算はすぐに割けるのではないかと思ってるので、これは何としてでもやりたい。
 生活保護の水際作戦について。都の保護課がフリーダイヤルで受けて指導するということですけれども、現実の保護行政というのは、都の方から区とか市の福祉事務所にそういうことを指導すれば、かなり改善されるような制度になってるのでしょうか。その辺はどうでしょうか。

稲葉 はい。私たちずっと東京都内の各自治体で生活保護の申請を行ってきましたけれども、区が変な対応したときに、よく都に電話するのですね。都の保護課に電話をして、区がこういうことを言ってるのですけれども、それは本当ですか、という風に言って、都の方から区を指導してもらうということは時々あります。ただ、そもそもそうした仕組み自体知られていませんし、そのために都の保護課に専用職員がいたりとか窓口があるわけではありません。ですので、やはり都として拡充していただければ、水際作戦もなくしていけるのではないかと思っています。

宇都宮 福祉事務所被害110番みたいな。そういうところに、もっと苦情を受け付けると同時に広報をもやらせたらいいのではないかと思います。

稲葉 本当に宇都宮さんが都知事になって、テレビコマーシャルで困っていれば生活保護を利用してください、申請に来てくださいと、いう宣伝をぜひ行っていただければと思っています。

宇都宮 視聴者の方は東京の住まいの問題が大変よくわかったのではないかと思います。東京は非常に大きな都市で豊かそうに見えますけど、ちゃんとした人間らしい住まいすら確保できない人がたくさんいるんだ、ということがわかったのではないかと思います。私としては、そういう問題について全力を挙げて解決する取り組みをやっていきたいと思っております。今日は稲葉さんどうもありがとうございました。