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宇都宮けんじブログ

「うつけんZOOMトークライブ@中野」のご報告(2020年8月1日)

今から始まる、今から始める。 「うつけんZOOMトークライブ@中野」のご報告 (2020年8月1日)

8月1日、宇都宮けんじのトークライブが開催されました。コロナ対策など都政の課題から、「犬と猫どっちが好き?」といった個人的なことまで、市民からのさまざまな質問に、宇都宮けんじが答えました。Zoomのもようは、YouTubeでも生配信されました。

開催日:8月1日(土)14:00〜16:00
司会:鯨エマ (女優、演出家、劇作家)
主催:うつけんZoomトークライブ実行委員会
共催:都政を変えよう!中野の会、都政を変えよう渋谷の会

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一問一答は以下のとおり。

Q. 都知事選に立候補した理由は?
A. 2014年の都知事選の終了後、ボランティアの皆さんと一緒に「希望のまち東京をつくる会」を作り、都議会の傍聴や、都政の勉強・監視を続けてきた。2016年は出馬表明までしたが、野党共闘候補として鳥越氏の出馬が決まり、苦渋の決断で辞退。立候補はずっと考えてきた。今回コロナで多くの都民が仕事や住まいを失い、貧困や格差が広がっているので、それに対するちゃんとした政策を掲げるべきだと思い、出馬をした。

Q. 都知事選の結果について。
2位になった原因についてどう思うか。366万人もの都民が小池知事にもう4年託す、その理由がわからない。この結果をどのように分析する?
A. 都民の関心はコロナ対策だったと思うが、安倍政権がもたもた後手後手。そういう安倍政権に対して、小池知事がよくやっているように都民の目に映ったのではないか。選挙期間中もコロナの感染者数を発表するのにテレビに出ずっぱり。これは選挙活動と同じ。選挙候補者のテレビ討論会も一度もなかったのは異常だったと思う。テレビの影響力と、取り立てて失政がなかったように見えた。小池氏を支持する多くの都民の幻想を打ち破れなかったのが、大きな原因と思う。一方、コロナのため街頭宣伝が非常に制約された。代わりにネットを通じて発信することを重視しての取り組みとなったが、ネットの力はまだまだ民間のテレビ局の力を上回るほどのものになってないのが日本の現状。制約を課せられた選挙戦のなかで支持を広げられなかったのも敗因だと思う。

Q. れいわ新撰組と一緒にできなかったことについて、どう考えているか?
A. 統一してできたらよかったのかもしれないが、出馬するという人を止める権利はない。出馬するなら堂々と政策を戦わせて論戦するのが筋だと思った。支持層が重なる部分はあったので票は割れたと思う。残念だがやむを得ないことだと思う。

Q. 今の東京都のコロナ対策について。
東京でPCR検査が整わない本当の原因は? 都知事のコロナ対策をどう評価してる? 宇都宮さんならどうする?
A. 小池知事は都民の健康や命よりも五輪を優先した。初動対応を怠ったので感染者が増えた。PCR検査を徹底的に行い、感染者の隔離をし、安心のうえで経済活動をするべき。日本のPCR検査数はOECD加盟国36ヶ国中35位。国会を早く開いて、特措法を変え、罰則付き休業補償を実施する。お酒を伴う飲食店には午後10時以降休業要請、協力金を払うというだけではダメ。東京都医師会や大学病院などあらゆる所に支援を求め、そのために必要な財政支援を徹底する。これを行う経済力があるのに実行しないのは、本気度がない。

Q. 都政の病院問題について。独法化反対の決意とはどのようなものなのか?
また、都立病院・公社病院を存続させるためのこれからの運動とは?
A. コロナ患者を受け入れる民間病院ほど経営が困難。そうしたことを気にせず安定してやっていけるのが都立病院・公社病院。独法化は実質的な民営化に繋がる。経営のことを考えざるを得なくなり、安心してコロナ患者を受け入れる病院がなくなってしまう。これでは都民の健康や命を守れないので、こうした基礎的基幹病院は都内には必要。地域の病院を守る運動に、たくさんの人が関心を持って参加してほしい。私も運動は続けていく。

Q. 現段階において都政に欠けているものは?
A. 一番の問題は、貧困や格差への対応。ここ20年ほどできていない。相対的貧困率では国民の6人1人が貧困。子供は7人に1人、ひとり親家庭は2世帯に1世帯が貧困。東京都の今の予算は15兆4千億くらいの予算規模。元々、地方自治体の役割は、住民の暮らしや福祉を充実させることが役割。給食の無償化や大学の授業料の半額化・無償化、都営住宅の建設や家賃補償制度など、都民の生活に予算を使えるはずなのにしていない。これは貧困や格差の問題に対する知事の考え方が希薄だからだと思う。

Q. 日本の三権分立を正しく機能させるにはどうしたらよいか? 総理大臣が警察や検察の人事に口を出せないようにする方法は?
A. 立法・司法・行政が三権分立で、警察は行政の一部。検察は司法の一部。三権分立という場合、警察の独立までは入らないが、検察の独立は司法の独立の中に入る。司法の独立を担保するには身分保障の問題、人事の独立性の問題が一番大きい。三権分立がちゃんと確立している所は、行政のトップが抑制的。安倍さんはそれが理解できていない。
片方で、それを許している日本の国民の問題もある。三権分立は民主主義社会にとって極めて重要であるということが、日本ではまだ十分に理解されていない。三権分立は国家権力によって国民の人権を侵害させないための制度。独裁政権を許さないもの。三権分立がなぜ必要なのかについて国民の中にどれだけ定着しているか。人権が侵害される危機感が我が事のように考えられてない。
日本は立派な憲法を持っていても、それは敗戦の結果でできたもの。自分たちで勝ち取ったものではない。市民革命をやっていない。そこが日本の市民運動や国民の弱さ。それを自覚し克服する運動が必要。

Q. 少人数学級について。
A. 先生が子供たち一人ひとりの個性に合わせて授業ができるのは、少なくとも30人以下だと思う。デンマークでは法律で28人以下にするよう学級の子供の数が決められている。知識や情報も重要だが、民主主義の主人公を育てることを重視しているので、対話を通じて授業をする。一方的な詰め込み教育ではなく、皆で一緒に考えていくことを大切にしている。そういう授業を行う上でも、少人数学級じゃないと駄目なのではないか。

Q. 気候変動の問題について。
A. 今年も水害が出ているが、気候変動は無関係ではない。災害問題に繋がっている。地球環境が変質してることについて、全地球的に考えていくことが我々の課題。コロナ禍の中で気候変動を考えるということで、グリーンリカバリーという政策を出している。世界的な連帯が必要。

Q. 消費税の減税について。
A. 消費税の減税を考えるのであれば、貧困や格差をなくすための財源について考える必要がある。学費、医療、住宅、保育所、特別養護老人ホームを作るなど、福祉を充実させるには予算が必要。消費税だけでなく、法人税や所得税など、トータルに考えていかないと、財源の議論へと戻ってしまう。現状は、ほとんどが自民党税調と政府税調で決められている。国民の意見が反映されていない。議論の内容もほとんどの国民がわかっていない。税制は政治の基本。国民主権を考えるのであれば、税金の使われ方は一番重要な問題。我々自身が学びながら、政府にきちんと物申す主権者としてふるまう国民が増える必要がある。

Q. ジェンダー平等について。
A. 重要。人口の半分は女性。主権者であり有権者。制度的に変えていく必要がある。女性が増えれば議会のあり方も変わってくる。保育所を作るなどして女性が議員として活動しやすい環境作りをすればいい。そういうことができない中で女性が活躍する社会なんて空言。やる気がないのにスローガンだけ掲げているのは政治家の無責任。

Q. LGBTQについて。
A. パートナーシップ制度を導入すべき。一部の区で実施されているが、ほかの区に移った場合に利用できなくなるので、東京都として制度を作る必要がある。将来的には、同性婚法を国会で作るステップにするためにも、東京都で作ってほしいという声がある。台湾はアジアで唯一同性婚法がある。先進的な取組みを行っている国から日本も学ぶべき。

Q. スポーツは?
A. 野球選手になりたくて中学2年まで野球部だった。身体が小さくプロになれないと断念。その後、大学3年まで卓球部。通勤は駅からできるだけ歩く。タクシーをできるだけ使わない。

Q. 「自己責任」という言葉についてどう思うか?
A. 自己責任という言葉は、昔はあまり使われていなかった。イラク戦争を取材していたジャーナリストが捕まり、政府が救出活動を始めたときに使われだした言葉。そこから、貧困や格差が広がるなかで、自分が努力しなかったから正規労働者になれなかったなど、社会全般でそういった空気が広がっていった。仕事や住まいの保障をするのは国や政治の責任。そのために税金を払い、政府や自治体を維持している。自己責任とは政治家を免責する言葉。政治家にとって都合がいいから、政治家は自らそれを否定しようとしない。病気になったり失業することは誰にでもあること。分断を導く言葉。

Q. 生活保護は恥ずかしい?
A. 憲法25条で「健康で文化的な最低限の生活」が保障されている。国民の基本的な権利。これを保障する責任が国にはある。収入や仕事が減って生活が困難になったら、誰でも生活保護を受ける権利がある。権利なので恥ずかしいことではない。
ところが、恥ずかしいと思わせてる風潮がある。これは生活保護の権利を受けにくくさせる。困難な状況になったら皆、生活保護を受けていいんだということを、国や自治体の責任者は、国民や住民に説得しなければならない。
弁護士会としては、「生活保護」という言葉は問題だと考えている。面倒を見てやるという上から目線の言い方ではなく、権利なんだということを明確にするよう、さし当たりの案として「生活保障法」に変えるべきであると改正案を出してる。面倒をみてもらってるんじゃなく、税金を払っているわけだからそんなの当たり前だという気持ちが、国民の側にも必要。
こういう感覚があるので、日本は10人生活保護を受ける権利がある人の中で、利用している人は2~3人。先進国のなかで最低の捕捉率。これは変える必要がある。生活保護は権利だという意識が行政も乏しいのだと思う。「出前福祉制度」という制度を作るべき。福祉担当者が、生活困窮してる世帯をまわり、発見し、福祉に繋げるような制度を作るべきだと提案してる。ソウル市では行っている。

Q. 命の尊厳について。やまゆり学園事件から4年。ハンディを持つ方たちを大切にする社会をどうすれば作れるのか? 私たちは何を大事にしていかなければならないか?
A. もう一回人権について考えてみる必要がある。ある人には人権があって、ある人には人権がないということは、憲法でも世界人権宣言でも定めてない。すべての人に人間としての尊厳があり、すべての人の人権が保障される。これは当たり前の世界概念。日本社会では人権という概念がまだ普及していない。今の政治家が個々の人間の尊厳を考えてるかというと、必ずしもそうは思えない。
誰もが、その人なりの人間らしい生き方をする権利があるということを、お互いに認め合う。これが基本的人権の考え方の基本の中の基本。命の尊厳というのは、日本人だから人権が保障されて、外国人だから保障されないというものではない。政治家こそが人権を守る先頭に立つべきなのに、日本には反人権的なことを言う政治家が非常に多い。

Q. 弁護士になろうと思ったきっかけは? 弱い人の味方を続けてきたのはなぜ?
A. いい大学に入って親孝行しようと東京大学の法学部に入った。法学部というのは当時、大企業に入るか、官僚になるのがメインコースだった。入っていた駒場寮では社会的な問題に関心を持つ人が多かった。親に泥棒を強いられ、そのお金でパチンコをしたりお酒を飲んだりする親を持つ子供。部落差別がひどく、学校に行けず、50ぐらいで初めて文字を学んだ女性。私の生まれた漁村も貧しかったけれど、泥棒をさせられたり、学校に行ってない人はいなかった。世の中にそういう人がいることを知り、自分の家だけ貧困から抜け出すのは、人間として卑怯な生き方なのではないかと考えるようになった。そんなとき、弁護士志望の先輩から、弁護士は企業や組織の歯車になるのではなく自分で仕事を選ぶことができる、たまには人助けもできると聞き、いい職業だと思い、司法試験を受けてみようとなった。

Q. グレーゾーン撤廃に30年闘ったその根性の源は? 活動のエネルギー源となっているものは?
A. 自殺や夜逃げなど、サラ金問題の苦しみを知ってしまったからには、見て見ぬふりができなくなったということが一つのエネルギー。法改正までいったのは、個別の救済だけでは救済できない人が大量にいるということを知ってしまったから。高利の規制、暴力的な取立ての規制、支払い能力を超えた貸付けの規制。立法運動をやるしかないとなり、30年かかった。
法律は国会でできているから、国会で変える。国会のロビー活動をする必要があった。自民党や公明党を説得するために弁護士会を動かして組織的にロビー活動を徹底して行った。法律を変えると、サラ金の取立てがピタッと止まる。いかに政治や法律が大きな力を持っているかを痛感した。

Q. 今後の展望について。
A. 都知事選は終わったが、都政の監視や改革は続けていく。都知事選で掲げた政策課題を実現する運動は続けていく。都議選は重要。地方自治体は、区議長と議会の二元代表制。都議会を変えることは、都知事を変えることと同等に重要。本当に都政を変えようと思ったら都議会を変えなくてはならない。
都議選の課題も、もし来年もコロナが続いていたら同じような課題となるのではないか。カジノ問題、給食無償化、都立大学半額化、少人数学級、定時制高校・夜間中学校の増設、所得制限のない高校の無償化などの教育に関する課題。都営住宅の建設、家賃補助制度、公契約条例、正規労働者を増やす。オリンピックがどうなるかはその頃には結論が出ていると思うが、大半が都知事選で掲げた政策と重なると思う。

Q. 宇都宮さんの次の立候補はあると考えていい?
A. 私の年齢や体力の問題があるけれど、そのときの私自身がどうなっているかということも重要。運動は継続していく。

Q. 都政監視委員会は誰でも参加できるか?
A. できる。都議会傍聴を呼びかけて傍聴をする。休憩時間にお茶会をして、参加者同士で情報交換をしたり、興味のある課題について議論したり。ここ何回かはコロナの関係で傍聴が禁止されている。今後も呼びかけるので、是非、気軽に参加してほしい。

Q. どうやって政治を変える? 私たちにできることは?
A. 都議会、区議会の傍聴ができる。区政や都政に対して要望ができる。政治に関心を持ち、一緒に考える人を増やす。民主主義を根付かせ、投票率をいかに増やすかが重要。
日本では政治に口を出すと社会から変な目で見られる風潮があるが、それを打破しなくてはならない。若い人がどんどん発言をして社会を変えていくのが健全な社会。政治は特別な人がやるものではない。

Q. 宇都宮先生のような弁護士になりたい。どのような勉強をすればなれる?
A. 司法試験というのは国家試験の中でも難しい部類の試験。弁護士になりたいというエネルギーを、どう自分の中に蓄積していくのかが重要。私は社会的現実にぶつかったとき、なんとかしたいという思いが強くなった。知ることが大きな動機付け、がんばるきっかけになった。法律はちゃんと勉強しなくてはならないけれど、弁護士というのは毎日社会で起こってくる事案を解決する職業なので、日本の社会問題について日々関心を持つことが大事。

Q. 座右の銘は?
A. 「 真理は寒梅の如し 敢えて風雪を侵しても開く」。 これは同志社大学の創設者である新島襄さんの言葉。寒梅というのは寒いときに咲くもの。厳しい環境のなかで闘って初めて真理というものが花開く。真理というのは自分の目標や願いと考えてもいいと思う。この言葉は好き。

Q. 犬派? 猫派?
A. 私は戌年生まれ。小さい時に犬と猫、両方飼っていた。猫は宇都宮家に先にいた。家に上がれるのは猫だけだった。猫は自分のほうが偉いと思って犬をいじめてばかり。犬のマルはとても懐いてくれた。学校帰り口笛を吹くと迎えに来てくれた。猫もいいが、自分の戌年生まれも含め、犬派。

Q. 将来の夢は?
A. 夢は市民活動家ということになるかもしれない。弁護士の仕事ができなくなっても、自分の体がつづく限りは市民活動をしていきたい。まだ3分の1しかできてない。弁護士を辞めたら全生活を市民活動に捧げたい。

Q. 最後にこの番組を見ている皆さんにひとこと。
A. 政治を変えたい、早く実現させたいという思いがあると思うが、サラ金問題には約30年かかった。たった一つの法律を変えるのに日本はそれだけ時間がかかる社会だということ。ただ、誰かが大きな岩を砕きつづけないと、いつまで経っても崩れない。日本の政治というのは、戦後から75年経つが、ほとんど自民党中心の政治。これを崩せてない。これはなぜなのかということを皆で一緒に考えながら、腰を据えて、一喜一憂せずに土台を変えていく活動が必要。地味で目立たないかもしれないけれど、必ず理解してくれる人が増えてくる。