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宇都宮けんじブログ

新型コロナ災害緊急アクション・中間報告会と政府交渉についての報告(2020年8月19日)

 

宇都宮けんじも参加して、8月19日(水)に衆議院第一議員会館で「新型コロナ災害緊急アクション」主催の中間報告会と対政府交渉が開催されました。
新型コロナ災害緊急アクション(以下、緊急アクション)は、生活困窮者支援に関わる全国の32団体が集まったネットワークです。
この集会には国会議員や議員秘書、この運動を担っている方や支援者、生活困窮の当事者、市民、マスコミ関係者など100名以上が参加しました。ベトナムからの元技能実習生の方々も10名以上参加されるなど、外国人の当事者も多く参加し、その当事者からの発言もありました。なおこの集会の模様と緊急アクションの活動が当日のTBSテレビの「ニュース23」でも報道されました。

(動画はUPLAN社様のYoutubeチャンネルより)

第一部 新型コロナ災害緊急アクション 第二回中間報告会

司会進行は生活保護問題対策全国会議の田川さんと反貧困ネットワーク世話人の雨宮処凛さんでした。以下では報告順にレポートします。

瀬戸大作さん(緊急アクション事務局)
「反貧困緊急ささえあい基金の報告と活動報告」

「ささえあい基金」と「犬猫基金」(ペットを飼っている生活困窮者の支援)合わせて8300万円ほど集まり、これまでに約2200万円を宿泊給付や生活給付などに支出した。移住連(移住者と連帯する全国ネットワーク)と連携して、支援からこぼれ落ちた外国人にも1800万円ほど支援している。
当事者からは所持金が1000円を切った状態でのSOSが多い。この間、20代~30代の緊急支援が一番増えている。以前からネットカフェなどで暮らし日雇いおよびスポット派遣で収入を得ていたが、コロナで収入が途絶え、路上で生きるしかない、アパートを借りる費用がないといった事例も多い。生活保護の申請への同行活動も行い、緊急アクション参加団体の「つくろい東京ファンド」では、生活が困窮し、携帯電話料金を払えなくなった人にスマートフォンの無料貸し出しを行い、就職活動や家探しなどに役立ててもらっている。無料低額宿泊所の問題ある実態やそれに流し込もうとする行政の問題もある。
当事者を含めて自分たちは支えあってゆく活動を続けてゆくが、根本的には日本の政治が具体的に、この問題を解決しない限り、(当事者は)死にたくなくとも死んでしまう。その現状は全く変わっていないし、更に深刻化している。

猪股正弁護士(「なんでも相談会」事務局)
「いのちとくらしを守る何でも相談会 第3弾報告」

緊急事態宣言下の、4月18日、19日に、第1弾の相談会を全国25地域、31会場、相談員数延べ598人で行い、電話回線は125回線、相談件数は5009件であった。42万ものアクセスがあり、電話がつながらず、接続率は1.6%であった。自営業、個人事業主、フリーランスからの相談が多く、パート・アルバイト、派遣、契約社員、正社員などすべての働く人からの相談があり、外出自粛と休業要請で、仕事と収入が途絶え、生活費も底をつくといった切迫した相談が多かった。
第2弾の相談会は、緊急事態宣言解除後2週間ほど経過した6月6日(土)に、全国47都道府県95会場で、相談員延べ772人で相談会を実施した。電話回線は197回線、相談件数は1217件。今回は非正規を中心とする労働相談が増加した。高齢労働者からの相談も増えた。一方で、「生活保護は使いたくない」との忌避感を示す人も少なくなかった。国の施策や制度に対する批判や支援金の支給の遅れに対する批判や不満も多く寄せられた。
第3弾は、8月8日に、41都道府県、72会場で、相談員延べ512人で、相談会を実施した。電話回線は135回線、相談件数は途中集計段階だが239件。生活費相談が約半数、次いで労働相談が多かった。
今後も継続的に相談会を実施予定で、次回は10月10日(土)に実施し、次々回は12月に実施を予定している。
なお緊急アクションとは別の、「生存のためのコロナネットワーク」でも、「新型コロナ労働・生活総合ホットライン」(5月2日、3日)、「休業補償・解雇・倒産電話相談ホットライン」(5月3日、6月1日、7月5日)が行われてきた。

松澤秀延さん、原文次郎さん(クルドを知る会)
「支援現場から見えた、外国人への公的支援の必要性」

クルド人はトルコでの迫害などの状況が厳しいため、日本へ逃れてきているが、2011年の入管法の改定後、特に数が増えた。正確な数はわからないが、日本に2000人以上のクルド人がおり、蕨市や川口市など埼玉周辺に多い。
その内1000人近くの人が入管収容施設からの仮放免でいるということが分かった。在留資格がなく、仮放免だと仕事をすることも許されず、健康保険にも入れず、移動制限もされて県を超えての移動も入管の許可が下りないとできないなどの制約を課されている。彼・彼女たちは1食100円~150円で生活している。
ほとんど9割以上の方は難民申請しているが、トルコからのクルド人は難民認定されていない。10万円の特定定額給付金も住民登録されていないという理由で支給されておらず、外国人も日本人と同じくコロナにかかる危険があるのに、排除されている。公的支援が全くない中での民間からの今回の支援はありがたいとのことだ。移住連(移住者と連帯する全国ネットワーク)と「ささえあい基金」からの支援金、合わせて2000万円ほどの支援金を渡せたが、お米や食料、品物の支援もありがたいと話されていた。

稲葉剛さん(つくろい東京ファンド)
「生活保護申請同行の現場から 公的住宅支援の必要性」

「つくろい東京ファンド」では、コロナ禍でネットカフェが閉鎖になり、追い出された人々を緊急アクションとともに支援してきた。だが、7月下旬から再びコロナが拡大し、飲食店など時間短縮になり、そこで働いていた人々が再び仕事を失う、あるいは収入が減少するということが起きており、その相談も増えている。とくに住み込みで働いてきた人が住まいを失うという事態も生じている。
「つくろい東京ファンド」では、この間、空き家を借り上げて、個室シェルターを現在まで56室用意してきた。ただこれでは追いつかない状況になっている。東京都の方は緊急事態宣言にあわせてビジネスホテルの提供を行っていたが、これが7月上旬で、新規の受け入れが終了した。そのため、各福祉事務所への生活保護申請に同行した際も、ビジネスホテル等は活用できない。一部の自治体では、独自に提供しているところもあるが、ほとんどのところでは、相変わらずの無料低額宿泊所依存、そこへの流し込みが行われている。自治体での対応の違い、自治体間格差も大きい。
生活保護を使いやすいものにすることが必要だ。また、生活保護の手前の制度として住宅確保給付金という家賃補助の制度もあるが、使い勝手が悪いので、使いやすいように改善を求めていきたい。10万円の特別定額給付金は、多くの自治体で8月末で、申請が終わってしまうが、いまだにホームレスの人、住民票が消去されている人々は、受け取れないことが起こっている。柔軟に対応している自治体もあるものの、総務省の側は、依然として住民基本台帳に記載されているもののみとしているので、路上生活している人、あるいは外国籍の一部の人々が受け取れないという状況が続いている。
新型コロナ災害緊急アクションに集まる団体や個人は、この間全力で支援してきたが、国はいったい何をやっているのだと強く訴えたい。

渡辺寛人さん(NPO法人POSSE事務局長)
「労働現場から見えてきた企業の責任と労働組合の取り組み」

POSSEには、通常は年間通常2000件~3000件くらいの相談があるが、今年は2月から7月9日までに、労働相談だけで1000件ほど、その他に外国人の相談、生活相談なども合わせると、4000件近くの相談が来た。
コロナ関係の相談内容は、大きくは、休業補償問題、解雇・雇止め問題、危険な三密職場問題に分けられる。行政だけでなく、企業の責任もきちんと問う必要がある。企業が休業補償をしないという相談が非常に多い。新しくできた休業支援金は、中小企業だけで、大企業の労働者は除外されるため、大企業の非正規労働者の救済にはならない。企業は非正規を雇用の調整弁として使い、コロナで業績が悪くなったら非正規や派遣を切ろうとする。非正規は女性と外国人が多い。正社員はテレワークでも、非正規は危険な三密職場で働かされている。

第二部 緊急政府交渉

下記の要請項目について政府交渉が行われました。出席した省庁の担当者は、総務省、厚生労働省、文部科学省、国土交通省などです。

新型コロナ災害緊急アクションの政府に対する要請項目(抜粋)

・外国人政策関連

1. 日本にいながらも住民登録の対象外となっている人たちに特別定額給付金を支給してください。
2. コロナ禍による生活困窮は国籍や在留資格に関係ありません。生活に困窮するすべての留学生および朝鮮大学生に対して、学生支援緊急給付金を支給してください。
3. 生活に困窮するすべての外国人に生活保護の適用と、すべての医療機関で、無料あるいは低額で診察・治療ができるように公的支援をしてください。
4. 仮放免者や短期在留者にも、公営住宅の目的外使用制度を適用してください。
5. 帰国困難者への支援を行い、民間シェルター等への財政援助をしてください。

・住まい・生活保護関連

1. コロナ禍で仕事と住まいを失い、生活保護申請をした生活困窮者に対して、福祉事務所が無料低額宿泊所(無低)への入所を事実上、強要するケースが頻発しています。生活保護法に定める居宅保護の原則を徹底することを求めます。
2. 厚生労働省は、3月10日付事務連絡で「速やかな保護決定」を各自治体に促していますが、現場の対応には差が出ています。「速やかな保護決定」が徹底されることを求めます。
3. 住居確保給付金制度を普遍的な家賃補助制度へと拡充することを求めます。

・特別定額給付金と医療政策関連

1. 特別定額給付金の給付要件から住民登録を外してください。
2. 特別定額給付金に関して、各自治体にワンストップ相談窓口を作るように働きかけてください。困難を抱える方が給付を受けられるように施策してください。
3. 10万円特別定額給付金の申請期限を延長してください。
4. 命を守るために、コロナ対策に「医療弱者」の声を取り入れてください。

路上生活者や外国人への特別定額給付金10万円の給付について、総務省は「日本にお住いの、すべての方へ」と言いながら、出席した総務省の担当者は、住民登録されていない者や入管施設からの仮放免者、短期在留者は支給の対象外との主張を最後まで崩しませんでした。多くの路上生活者や仮放免者などの外国人が、特別定額給付金を受けられないなか、給付金の申請期限を延長してほしいという要望も受け入れませんでした。朝鮮大学生に対す 学生支援緊急給付金に対して、文科省の担当者は支給対象外と言い張りました。
仮放免者や短期在留者に対する公営住宅の目的外使用制度の適用に関して、国交省の担当者が唯一前向きな返答をしたのみで、他は総じて否定的な回答でした。新型コロナ災害緊急アクションでは、省庁に対して改めて回答を求めるとともに、再度政府交渉を行うとのことです。