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宇都宮けんじブログ

「あり得ない!東京オリンピック ―都政はコロナ対策と経済補償を優先せよ―」のご報告(2021年3月26日)

希望のまち東京をつくる会・オンラインイベント
「あり得ない!東京オリンピック ―都政はコロナ対策と経済補償を優先せよ―」
(宇都宮健児×本間龍スペシャル対談)(2021326)のご報告

3月26日(金)に希望のまち東京をつくる会の主催で、東京オリンピック開催反対の急先鋒として論陣を張り続けてきた作家の本間龍さんと、当会代表による宇都宮健児によるスペシャル対談がオンラインのウェビナーで開催された。司会は当会メンバーの内田聖子(PARC共同代表)が務めた。200名以上が参加し、耳が不自由な方のための文字情報の提供(筑波技術大学若月研究室開発 captiOnlineシステムを利用)も行われた。 

最初に宇都宮健児が希望のまち東京をつくる会を代表して挨拶。続いて本間龍さんが、コロナ禍でオリンピックを開催することの問題点、巨額に膨らむオリンピック経費とその関連予算のほとんどが都民や国民の税金で賄われること、その資金の不透明な使われ方など様々な問題点を説明した。

オリンピック経費は現段階で35000

ちょうど前日の325日に、聖火リレーが始まったばかりだったこともあり、「もうオリンピックを止められないのではないか」という事前質問も寄せられていたが、本間さんは、「聖火リレーは露払い、客寄せイベントであり、オリンピック本体とは何ら関係ないので、オリンピックの開催が止められないということはない、オリンピックの開催は、この後1~2か月の間に決めるべきこと」と述べた。

続いて、オリンピック開催強行の大きな問題点として、①新型コロナ肺炎のクラスター発生源になる可能性が非常に高い、②際限のない巨額税金投入、③11万人(都募集の3万人と組織委募集の8万人)のボランティアの無償での使役(この問題は本間さんが最初から追及してきたこと)、④酷暑の中で、ボランティア、観客の熱中症の危険が高い、それがコロナ対応と併せて医療機関を圧迫することなどを指摘。

さらに、膨れ上がるオリンピックの経費と巨額な税金投入の問題について言及した。招致時に政府と組織委が発表した経費は、7300億円とされたが、昨年時点で1兆3000億円になり、それに延期により3000億円が追加され、16400億円とされ、そのほかに、間接的費用として1600億円が支出されているという。さらに東京都のオリンピック関連費も、7600億円、約8000億円、合わせて現段階の総経費は35000億円という巨額になっている。

そのうち、組織委が自前で集めた資金(チケット代やスポンサーから集めたお金、IOCからの借入金など)はマックスで見積もっても7000億円程度なので、残り28000億円が税金で賄われることになる。今後、テロ対策費とコロナ対策費は、更に膨れ上がるだろうと言われており、組織委の幹部の中には、五輪の経費が最終的にいくらかかるかわからないという者もいるという。

会計の明細も明かさない五輪組織委員会の不透明さ

この3月、組織委は、東京オリンピックの海外一般客の受け入れを断念した。海外観光客の受け入れを断念したが、それではもはやオリンピックとは言えない。政府はオリンピックのインバウンド効果が経済回復のきっかけになると強調していたが、それが完全に消滅し、販売済みのチケット代も返金しなければならなくなり、大赤字になることは明らかだ。

かつ、コロナ対策で海外からの観光客受け入れを断念しても、IOC役員、海外からのVIP招待者、海外メディア、スポンサー関係者等10万人を超える人々が来日するという。前回1964年の東京五輪は、戦後復興の象徴、国際社会への復帰という意味があったが、今回はそのような精神的な意味がなく、インバウンド効果狙い、経済的利益のためだけに招致しているものだと本間さんは指摘。海外からのVIPクラスの人たちのおもてなしのために多額の税金を支出するのかという問題もある。

元々、コロナ以前にも東京五輪をめぐる様々な問題があった。五輪招致時の裏金問題、五輪実施予算の際限ない肥大化、酷暑下での無理な開催、エンブレム盗作疑惑、「復興五輪」の掛け声倒れ、新国立競技場建設費のとてつもない高騰、東京ビッグサイトをメディアセンターにすることによる巨額の経済損失、霞ヶ丘団地の立ち退き問題など、様々な問題が発生していた。

史上最大の「商業イベント」と化した東京オリンピックは、ロンドン大会、リオ大会を大幅に上回る経費が掛かっている。しかも、スポンサー企業はこれまで1業種1社という制限があったが、それを東京五輪ではなくして、スポンサー企業を67社集めて、3400億円を集めているという。それなのに、組織委は非常に不透明な組織で会計の明細を明かしていないのだ。最後に、東京五輪は史上最大の「感動・やりがい詐欺」であると本間さんは強調した。

(当日の本間さんの配信映像より)

後半の議論と質疑応答

休憩を挟んで宇都宮が再び登壇。本間さんへの質問を含めて議論が進んだ。

宇都宮は、東京都が負担するオリンピック費用について言及。現状だけでも、関連費を含めた1兆5000億円くらいを負担することになり、今後さらに膨れ上がる可能性がある。

「招致の時は「コンパクトなオリンピック」と称していたのに、経費が膨れ上がり、当初からそれを予想していたということであれば、詐欺的ではないか」(宇都宮)

海外の観客を断念した段階で、チケット代を払い戻さねばならない。さらに国内でも無観客になればチケット代900億円はゼロになる。その赤字は東京都と国が負担することになる。コロナ対策で、都の財政が逼迫している中、都負担はさらに増大しそうだ。

続いて、本間さんは、オリンピック予算関係でもまだしっかりと言及されていない医療費の問題について触れた。元々、組織委は熱中症対策として医師と看護師併せて5000人の医療スタッフの派遣を医師会に要請してきたが、その費用は予算に計上されていないというのだ。加えてコロナ対策が加わると、1万人の医療スタッフが必要になる。これによって都民の医療は圧迫され、そのための経費も膨れ上がる。これまでも、都立病院、公社病院はコロナ対応の中心を担ってきたが、それら病院がオリンピック対応病院に指定されてしまって、力を割かれ、医療体制が大変なことになる可能性がある。

問題点が次々に噴出している東京オリンピックだが、問題を報道すべき全国紙は、オリンピックのスポンサー企業になっており、中止を主張するメディアがないということも問題だ。ほかにも、コロナ禍により各国に対応格差ができている以上、公平・公正な競技が実現できない可能性もある。そのほかにも視聴者から多数の疑問や質問がよせられ、後半も密度の濃い議論となった。

コロナ禍中でのオリンピック開催は不可能

オリンピックを中止するか否か、最終判断をするのはIOCだが、開催国が中止を決定すれば、認めざるを得ない。そのためには、東京都や日本政府がオリンピック中止を決断することが重要だ。開催中止を言うと、IOCに対する違約金が発生するのではないかと言う人がいるが、本間さんによれば、IOCとの契約書にはそのようなことは書かれていないという。

中止決定のリミットは5月と言われているが、その際に緊急事態宣言が出ているようなら実質的には開催は不可能だろうと本間さんは指摘。もはや開催価値はないのに、強行されようとしているオリンピックは中止されなけばならない。国民の意思、都民の意思を具現化して、国会に提出するなどする際は、力を尽くしたいと述べた。

宇都宮は、「たとえオリンピックが中止になったとしても、3兆5000億円に膨れ上がった経費の問題、28000億円もの税金投入などの問題は、今後も追求していかねばならない」と延べ、15000億円もの多額の五輪関連経費を負担しているが、それらの資金はコロナ対策やその補償にこそ使うべきだと述べた。7月の都議会議員選挙においても、候補者に対して五輪問題をどう考えるか、問うてゆく運動が重要と述べた。

当日の動画は、本間龍さんのYouTubeチャンネル「一月万冊」で配信中。

 

 

 

(報告  希望のまち東京をつくる会 紅林進)