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宇都宮けんじブログ
関東大震災98周年朝鮮人犠牲者追悼式典（2021年9月1日）によせて
はじめに
毎年9月1日は、1923年の関東大震災直後に起きた朝鮮人虐殺の犠牲者を追悼する式典が行われています。東京都墨田区の横網町公園では、朝鮮人追悼碑建立がされた翌年の74年から、日朝協会などの実行委員会が主催となって毎年行っている式典です。しかし、小池百合子都知事は、それまでの都知事の前例を踏襲せず、この式典に対し追悼文を送っていません。今年は、IWJによる動画中継がなされましたので、リモート参加したスタッフによるレポートを掲載します。
レポート
- 追悼への思い
この追悼式典へこの数年は参列させていただいています。しかし、昨年今年とコロナ感染リスクが蔓延しているなかでの追悼となったことから現地ではなく動画による参加になりました。
関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑は、東京都墨田区の都立横網町公園にあります。大震災と東京大空襲、両方の犠牲者の追悼をする場所として有名です。震災時、昼時であちこちで火事が起き、広い空き地だったところへ多くの人たちが逃げてきました。その家財道具に火が次々と燃え移り、瞬く間に大きな炎に巻き込まれ多くの命を失ったその場所が現在の慰霊のための公園になりました。大震災で亡くなった人々のために、日本、朝鮮に、関係する碑だけではなく中国から寄贈された梵鐘、子供のための弔魂像もあります。敷地内では今年も震災犠牲者大法要が執り行われ、その裏手に朝鮮人犠牲者追悼碑が設置されていますが、この碑の前で関係する人たちからの証言を毎年聞いてきました。
なぜ、この追悼碑があるのか、98年前の関東大震災時になにがあったのか。多くの方と一緒に考えていきたいと思います。
98年前に6千人にものぼる朝鮮人や7百人以上の中国人が当時の軍隊や自警団によって虐殺されました。「（朝鮮人が）井戸に毒をいれた」「火をつけた」などの流言飛語によって、昨日まで地域で平和に暮らしていた人たちが殺人鬼となり多くの尊い命を奪う地獄絵図になった事実。東京下町だけではなく、東海道、中山道、五日市街道、関東近辺あちこちで暴動・虐殺があった証言について、これまでに私も読み聞きしました。日本人の社会主義者、労働運動の指導者たちも国家権力によって殺されました。
震災直後の大混乱の中でのデマを信じ、「親の仇」「子の仇」と凶暴化していく集団は現代の日本では考えられないだろうと思いたいですが、実際には、原発事故で避難した人たちへの差別、生活困窮者への冷たい仕打ち、入管の中での虐待、ヘイトクライム・ヘイトスピーチで精神的に痛めつける、大人の社会でのいじめ。人権なんてどこにいったのか、と改めて思うことが度々あります。
- 小池都知事による対応の問題点
私たちが過去に無責任、無関心でいないことが悲劇を繰り返さない道につながると信じて仲間と行動したいと思いますが、それとは反する態度を示しているのが小池都知事です。
2016年に都知事になった翌年から追悼文としての意を示しません。前述した大法要に追悼文を出し「朝鮮人も中国人もこの中に含め全ての犠牲者を追悼しているので個別の追悼文は必要なし」、また「歴史はいろいろな解釈がある」といった曖昧な態度も取っています。残念にも震災で亡くなったことと民衆や国家に虐殺されたことは理由は全く違い一緒にはできません。これまで歴代の都知事が追悼文を送ってきました。三国人発言の石原元都知事でさえ送付しました。
今年も、本実行委員会はじめ多くの団体や個人が追悼文提出の要請をしました。しかし、なぜ頑なに拒むのか、なぜ史実は無かったことにするのか、差別と人権、政府・行政の責任を顧みない首長がこの東京のトップに存在することに悔しさや憤りを覚えます。
この追悼式典について、このほかにも東京都はやっかいなことを行なってきました。
その一つが、朝鮮人虐殺の事実を否定する団体が同時刻に隣接する場所で行なう「慰霊祭」への公園占用許可です。「虐殺は歴史捏造」と大声で妨害し、ヘイトスピーチを行なうことがこのところ繰り返され大変に迷惑してきました。ヘイトスピーチ解消法ができて久しいですが、同じことを繰り返す団体に東京都は公園占用を許可。その一方で、朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会による公園占用許可について、特別扱いはしないと都は誓約書を書かせようとしました。
内容は「公園管理者の指示に従わなかったことにより、次年度以降、公園地の占用が許可されない場合があることに異存ありません」という内容。ヘイトスピーチを繰り返す団体にも誓約書を促し同等の扱いをしていることにも一層怒りが沸きます。
- 追悼のために
今年の追悼式典でとても印象深かったのは、横浜上野町教会の柴田智悦牧師による祈祷でした。
「初参加であることを恥じる」と語られ、日本での朝鮮民族の歴史に触れ、キリスト教会の多くは朝鮮人虐殺に沈黙し抗議の声を挙げることも、戦争への歩みを止めることもできなかった。偶像礼拝を戒めることもできなかった。過去に犯した大きな罪を自らの罪として悔い改め認めることで、忌まわしい事実を繰り返さない、国家にも繰り返させない、この場にいる責務を全うする。このような力強い告白宣言とご祈祷によって、これからさらに安息の地になるだろうと安堵いたしました。
その後、韓国舞踊の重要無形文化財、金順子（キム・スンジャ）さんの圧巻の鎮魂の舞。「共に分け合い、存し、互いに生きる」こうした意味が韓国の伝統芸能では大事に継承されます。
朝鮮半島を植民地支配してきた日本、いまなお分断されている半島の平和な未来を望みます。しかし、日本国内には在日の韓国朝鮮人の皆さんの苦しみや痛みに寄り添う訳でもなく、友好関係を建設する姿勢が見られず恥ずかしい限りです。外国籍の人たちの扱いも酷く日本では命さえ奪う国とレッテルが貼られ、いつ国際社会から見放されても不思議ではないと感じています。国家が意志を持たず、東京都もこれに同様。
98年前の震災翌日から10日間ほどで6千人もの在日朝鮮人、中国人、一部の日本人への虐殺があった事実を無視し、一方で東京オリパラでは多様性と調和、未来への継承を謳う、この二面性をどのように考えるのか。今年も哀悼の意を捧げると共に、都知事の姿勢に苦しむ日となりました。（希望のまちスタッフ・W）