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宇都宮けんじブログ
院内集会「国会議員との対話集会――どうする日本の貧困問題」(2019年10月29日)のご報告
はじめに
10月29日(火)に、希望のまち東京をつくる会(以下、当会)の代表でもある宇都宮けんじが代表世話人を務める「反貧困ネットワーク」の主催で院内集会「国会議員との対話集会――どうする日本の貧困問題」が衆議院第二議員会館で開催されました。以下では、当会のメンバーによる報告を掲載いたします。
演題:国会議員との対話集会――どうする日本の貧困問題
主催:反貧困ネットワーク
開催日:2019年10月29日(火)17:00~19:30
開催場所:衆議院第二議員会館第1会議室
司会は反貧困ネットワーク事務局長の瀬戸大作さん。参加者は74名。
反貧困ネットワークの雨宮処凛さんの挨拶の後、各政党国会議員からの「どうする貧困格差」に関する政策報告が行われた。
報告した議員は、尾辻かな子衆議院議員(立憲民主党)、清水忠史衆議院議員(日本共産党)、小宮山泰子衆議院議員(国民民主党)、高良鉄美参議院議員(沖縄の風)、山本太郎前参議院議員(れいわ新選組代表)だった。
第1部:各政党・議員からの発言
- 尾辻かな子衆議院議員(立憲民主党)
厚生労働委員会の委員であり、党の厚生労働部会の事務局長をしている。立憲民主党は、社会保障調査会を立ち上げ、また「つながる本部」を設けて、いろいろな運動をやっている団体や個人の方々とつながって、その課題を政策につなげてゆく。「子どもの生活底上げ法案」(通称、正式名称「生活保護法等の一部を改正する法律案」)を野党共同で出し、生活保護支給金額切り下げを許さず、児童扶養手当を月5000円アップする。年金の最低保証機能を強化し、特に国民年金の基礎年金の引き上げを検討。住宅手当の創設。最低賃金を5年以内に全国一律1300円へ引き上げる、その際、中小零細企業への支援も同時に行う。官民の非正規雇用をできる限り正規雇用化することによるワーキングプアの解消、一人親世帯の貧困対策、未婚の母でも寡婦控除と同じように税額控除を受けられるようにする。介護・保育分野の賃金底上げ。公立小中学校の給食費無償化、待機児童対策、保育の質の確保などの政策を述べた。
- 清水忠史衆議院議員(日本共産党)
清水議員は、元漫才師で、ラジオ大阪「ラジオ派遣村」(2011年貧困ジャーナリズム賞受賞)やネットの「派遣村TV」などの番組で、非正規や格差・貧困の問題を取り上げてきた。党の政策としては、「8時間働けば普通に暮らせる社会」をめざす。残業時間については最大月45時間まで、年間360時間までに制限することが必要。最低賃金を全国一律1000円、やがて1500円に引き上げる。非正規を正規化するとともに、「非正規でも安心して暮らせるルールを作ることが大切だ」と強調。国民健康保険の保険料が高いのは、均等割りがあるから。国保に1兆円の国費を投入して、均等割りをなくせば、保険料が4割下がる。年金については自動的に年金を引き下げるマクロ経済スライドをなくす。生活保護は憲法25条に基づく国民の権利であると明確にするため、生活保護法を「生活保障法」に名前を変える。また生活保護の水際作戦をやめさせ、補足率を引き上げることが必要。障がい者支援については、予算を抜本的に引き上げる。障害者自立支援法は応益負担になっており、法改正が必要。DV対策についてはワンステップセンターを作るなど総合的対策が必要と述べた。
- 高良鉄美参議院議員(沖縄の風)
沖縄の子どもの貧困率が全国平均の倍となっていることを示しながら、辺野古の埋め立てに2兆5500億円以上かかる問題や、戦闘機にせよオスプレイにしろ1機当たり100億円以上、維持費も含めると200億円もかかる。戦闘機を爆買いするなど無駄な軍事費をやめて、貧困対策に回すべきと述べた。沖縄への地方交付税は3500億円、沖縄が国に支払う税金は4000億円。10年以上、沖縄から国に出している方が多い。
- 小宮山泰子衆議院議員(国民民主党)
前日訪問した兵庫県明石市(泉房穂市長)の子どもファーストなどの様々な施策、成功例を紹介しながら、国民民主党の「家計第一の経済政策」、子育てを支援する「子供国債」の発行、離婚して養育費が支払われない場合の行政による支援、高齢単身女性の貧困対策、孤独対策(イギリスでは孤独担当大臣がいる)、年収500万円以下で、賃貸住宅で暮らす世帯への月1万円の家賃補助などについて述べた。
- 山本太郎前参議院議員(れいわ新選組代表)
地方での疲弊した状況を紹介しながら、消費税の廃止や5%への引き下げを訴えた。
第2部:反貧困ネットワークからの政策提言
次に、反貧困ネットワーク代表世話人である宇都宮けんじが、貧困と格差の拡大問題を解決していくための「反貧困ネットワーク」の以下の政策提言を配布した資料で示した。
第一に、全国一律の最低賃金制度の確立と最低賃金制度の大幅引き上げ、非正規労働者の待遇改善と正規化促進、同一価値労働同一賃金制度の確立、労働者派遣法の抜本的改正、長時間労働の規制強化、職業訓練・職業教育制度の確立などの「普通に働けば人間らしい生活が保障される労働政策」。
第二に、生活保護制度の運用改善と権利性を明確にした生活保護法の改正、雇用保険・年金制度の充実、公営住宅の大量供給、医療・高等教育の無償化など「失業や病気で働けないときでも人間らしい生活ができるようにするための社会保障政策」すなわち「権利としての社会保障制度の確立」。
第三に、充実した社会保障制度を確立するための財源を確立するための対策として、消費税増税よりも富裕層・大企業に対する課税の強化、タックスヘイブン(租税回避地)対策の強化など、「公平な税制の確立と所得・富の再分配政策」。
これらの提言を踏まえて、さらに宇都宮個人の意見も交えて、第一の提言に関して、野党には何年までに非正規を何万人、何百万人減らすという数値目標を掲げて、目に見えるような改革をお願いしたいと要望。なおドイツでは、非正規は正規より不安定でリスクのある働き方のため、非正規の方が正規より賃金が高いとのこと。そうすれば、企業はより出費のかかる非正規を抑制するようになる。
第二の社会保障に関しては、「選別的福祉」から「普遍的福祉」への転換という議論をしてほしい、また医療保険や年金等も「保険方式」から「税方式」に変えてほしいと述べた。
第三の財源に関しては、野党は「公約家計簿」のようなものを作って、財源を明示してほしいと述べた。
第3部:各団体・市民からの提言
政策提言に続いて、各団体・市民からの提言が行われた。
障がい者からの当事者発言として、当会で行っていた「うつけんゼミ」ゼミ生だった華川悠紀(仮名)さんから、障害年金を受けていると児童扶養手当が受給できない問題が訴えられた。
「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク世話人の三輪ほう子さんからは、今年は「子どもの貧困対策推進法」と「子どもの貧困対策対策大綱」の見直しの年に当たり、同ネットワークも「子どもの貧困対策議連」などとも協力して、その改定に取り組んできたが、その法律は6月に大きく改定され、今は「子どもの貧困対策対策大綱」の改定が課題で、そのためのパブリックコメント(11月3日で終了)に対する呼びかけも行われた。
生活保護問題に関しては、フリーライターで、生活保護関係の裁判を支援している白井康彦さんから、厚生労働省が物価の下落率を意図的に操作(「物価偽装」)して生活保護費を不当に引き下げている実態が報告された。
居住問題では、熊本美彌子さん(避難の協同センター世話人)から、原発避難者の住宅追い出しの現状、国家公務員宿舎からの追い出しや家賃の倍額請求など、その非情な実態が述べられた。
高等教育無償化プロジェクトFREEの大学生、斉藤さんからは、8000人の学生にアンケートを取って明らかになった、高額な学費に苦しむ学生達の苦境が報告された。来年度から、新しい修学支援制度が始まるのに伴い、今まで国立大学で行われていた授業料減免の枠が大幅に縮小されてしまう問題についても述べられた。
最後に「まとめ」を反貧困ネットワーク世話人の白石孝さんが、官製ワーキングプアの実態や韓国で進められている学校給食の無償化などにも触れながら、行った。